2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K04347
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
岩壁 茂 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (10326522)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 修正感情体験 / プロセス研究 / 感情 / 心理療法 / 治療関係 / 効果研究 / エモーション・フォーカスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①修正感情体験に関する理論、臨床文献の検討、②修正感情体験場面のプロセス分析、③修正感情体験に関する臨床事例のデータ収集。の作業を行った。修正感情体験という概念を用いた記述は力動療法および体験療法に広くみられた。しかしそれが意味するものは、かなり多様であった。 修正感情体験のプロセスの分析は、録画した心理面接の内容の分析、質問紙・尺度の検討、クライエントのインタビューという3つの視点から行った。まず、質問紙の得点およびクライエントへのインタビューから修正感情体験を抜き出した。また、臨床家の面接後の印象から修正感情体験が起こったと思われる面接を抜き出して、クライエントとセラピストの行動を課題分析にならって検討した。その結果、クライエントのインタビューによってはじめて同定される「表現されない」修正感情体験もあることが分かった。また、一事例の細かな分析から、似たような修正感情体験が繰り返されて、変化が浸透していくことも示された。一度の体験はクライエントにとって、肯定的なものであっても、必ずしも自己観や生活での変化に結びつくわけではなかった。それが何度か繰り返されていくうちに徐々に変化が起こっていた。また、修正感情体験によって起こる変化も生活領域において異なったスピードで起こることが確認された。比較的新たな対人関係では修正感情体験から得られた変化を活かしやすかった。しかし、もう一方で、より長期的に続く対人関係は、その変化がうまく発揮できないことが多かった。このように修正感情体験のプロセスが明確になりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標としていた3つの作業が順調に進んでいる。また、数事例のデータ収集が進行している。また、米国の加速化力動体験療法研究所の協力による修正感情体験に関する貴重な面接データを集めることが可能になった。修正感情体験に関するより多くのデータが短期間に集まりつつあるため、本研究は当初に予定したよりも、発展し、より多くの課題に取り組める可能性が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、加速化力動体験療法に関するデータの分析、そしてお茶の水女子大学でのデータ収集を進めていく。数多くのセラピスト・クライエントから得られた面接プロセスの分析により、修正感情体験の分類を行っていく。また、少数事例の細かな検討によって修正感情体験がどのように進展していくのかということも合わせてみていく。 これまでの成果を5月にアメリカ・コロラド州デンバーで開催されるThe Society for Exploration of Psychotherapy Integrationの年次大会で、また6月にカナダトロントで開催されるThe Society for PSychotherapy Researchにおいて発表する予定である。 これらの分析の結果は、最終年度に発表するため、年度末までに論文化も進めていきたい。
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