2016 Fiscal Year Research-status Report
小学生における無気力感改善のための教師・保護者介入プログラムの開発
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16K04357
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
牧 郁子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70434545)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小学生 / 無気力感 / 情動交流 / 介入 / プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は保護者を対象とした介入プログラム原案作成のため,前回の基盤研究(C)「小学生における無気力感メカニズムと教師介入プログラムの検討」(課題番号25380927)で得られた知見に関する詳細な考察を,国内外の文献研究に基づき行った。その上で,介入理論および方法に関わる国内外の文献研究を行った。
前回の研究知見から,ポジティブ情動を保護者に送信できる子どもそれを受信されている可能性があるが,ネガティブ情動を保護者に送信できる子どもが,必ずしも保護者に聴いてもらえているとは限らない可能性が示唆された。保護者のメタ情動と子どもの情動制御能力(Gottman, Fainsilber, & Hooven, 1996)・子どもの感情に関する会話(Gottman,1997)との関連性が示されていること,また大人はネガティブ感情には否定的であること(大河原,2015)から,子どもがネガティブ情動を表現しても保護者が受けとめられるケースとそうでないケースとがある可能性が考えられた。以上から,主にネガティブ情動に関する保護者介入の必要性が示唆された。
また愛着理論(Hoffman, Marvin, Cooper, &Powell 2006),精神分析(Winnicotto,1959,1963)から,子どもの感情表出への保護者の対応が情動発達に影響することが示唆され,保護者介入の妥当性が確認された。さらに本研究では児童期の感情表出の環境として保護者を想定していることから,「情動表出する機会」(Kennedy-Moore & Watson,1999)への介入と定義された。そして子どもの情動表出の機会を保証するために,保護者の子どもの情動への気づき,子どもの情動の言語化支援,子どもの情動への共感と承認(Gottman, Katz, & Hooven,1997)を促進するプログラムの必要性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前回の基盤研究Cの最終年度後半に,関西圏ではあるが都市部ではない文化圏での大量データがとれ,関西圏の都市部データとほぼ同じ無気力感モデルが確認されたことから,本研究では当初予定していた交差妥当性の検討を割愛した。そこで当該年度は,次年度開発予定の「教師・保護者介入プログラムの開発」のうち,特に「保護者介入プログラム開発」に鑑み,小学生における保護者との情動交流の詳細な考察と,介入理論および方法に関わる国内外の文献研究を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は「小学生における無気力感改善のための教師・保護者介入プログラムの開発」を行うことを目的とする。
1.小学生における無気力感改善のための教師・保護者用・心理教育の開発:昨年度までの研究成果・文献研究,および新たに集団介入に関わる国内外の文献研究を加え,小学校教員と小学生の子どもを持つ保護者対象の研修・講演で使用する心理教育の開発を行う。具体的には「無気力感と大人との情動交流の関係性」を,昨年度までの調査成果に基づき説明したうえで,研究結果から有効と考えられる教師・保護者の関わり方のポイントについて,事例や具体例などを用いて作成する予定である。 2.小学生における無気力感改善のための教師・保護者用・介入テキストの開発:昨年度までの研究成果・文献研究に基づき,小学校教員と小学生の子どもを持つ保護者対象の研修・講演で使用する介入テキストの開発を行う。具体的には,1.で作成した心理教育内容に基づき,教師が学校でできる具体的な面談方法や,保護者が家庭でできる具体的関わり方を視覚的にまとめた,ワークシート形式内容の提案を行う予定である。 3.作成した心理教育・介入テキストに関する意見聴取:1.と2.で開発した心理教育・介入テキスト原案を,申請者が勤務する大学院の社会人院生(小学校教員・教育委員会指導主事・小学校管理職等)を対象に内容の意見聴取を行い,そのフィードバックに基づき原案の改訂を行う。
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Causes of Carryover |
当該研究に関わる発表および発表内容に関わる専門家の意見を聴くための,学会参加費・発表旅費が必要である。また当該研究に関わる国内外の文献研究のための書籍購入代金も併せて必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
日本教育心理学会(名古屋大学)・日本心理学会(久留米大学)への参加費・旅費 子どもの情動表出に関わる理論・介入研究に関わる書籍費用
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Research Products
(2 results)