2017 Fiscal Year Research-status Report
認知の偏りを総合的に測定する認知特性プロフィール尺度の開発
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16K04359
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
相澤 直樹 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10335408)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山根 隆宏 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (60644523)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 認知バイアス / 精神障害 / 臨床心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は以下のような研究成果を得た。 1.年度当初より研究分担者と連絡を取り、本年度の研究目的、研究方法、学会等への参加計画、物品の購入計画について検討し、本年度の研究計画を策定した。なお、研究分担者は、研究代表者と同じ大学機関に所属するため、研究に関する協議を効率的におこなうため、研究打合せ会議の形式はとらずに、適宜話し合いを持った。 2.昨年度から引き続き国内外の認知の偏りや歪み、ないしは認知心理学に関連する書籍と学術研究論文を広範囲に収集し、それらの内容を整理分析することを通じて、本研究の調査実施に必要な基礎的な知見の確立に努めた。その結果、我が国においてはいまだ同領域の研究は少ないものの、欧米を中心とする海外では認知行動療法等に関連して多数の先行研究が報告されていることが明らかとなった。 3.昨年度本研究の予備調査研究として実施した自己愛傾向と敵意帰属に関する調査データを継続的に分析した。その結果、予備調査としては仮説どおりの有意な結果が得られなかったことが明らかとなった。以上の結果を詳細に分析した結果、調査方法を場面想定法による質問紙調査からインベントリー法による質問紙調査、ないしは実験的手法に変更する必要性が示唆された。 4.認知の偏りと歪み、ならびに関連する精神障害に関する最新の研究知見を収集するため、研究代表者が日本心理臨床学会第36回秋季大会に参加し、関連する研究発表、シンポジウム、ラウンドテーブル等に参加し、同分野の研究者と意見交換をおこなった。 以上の研究成果を受けて、認知の偏りと精神障害との関連について総合的な検討をおこなった。文献資料研究として得られた成果を神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要に1篇の報告論文として投稿した。また、本調査研究については調査方法の再検討に早急に取り組むとともにより効率的な調査方法の検討をおこなう必要性を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画の達成度を文献資料研究の進捗状況、調査研究の計画と実施状況、ならびに成果の公表の観点から次のように評価した。認知の偏りやゆがみと関連する認知心理学的知見、またそれらが関連する精神障害について、国内外の専門書籍と学術研究論文を収集し多くの知見が得られた。とくに、欧米を中心とする認知行動療法関連の研究の中では従来の気分障害や社交不安障害だけでなく、強迫性障害、パニック障害、精神病(統合失調症)等多種多様な精神障害が認知の問題に関連するものとして研究されていることが明らかとなった。以上の広範な研究知見を収集整理し、1篇の研究論文として投稿した。以上の点から文献資料研究についてはおおむね順調に進展しているものと評価した。一方で、調査研究の計画と実施状況については、予備調査データを詳細に分析し、また先行研究の知見も参考として検討したところ、当初想定していた場面想定法を用いた質問紙調査では十分な結果が得られないことが懸念された。そこで、改めて調査方法の再構築が必要となった。先行研究における調査手法を参考としたところ、インベントリー式による質問紙調査か実験的手法かのいずれかが妥当なものであることが考えられた。以上の検討を受けて、すでにインベントリー式の質問紙調査に向けた準備に取り掛かっており、まもなく調査実施となる状況である。しかしながが、予定通り実際の調査実施にはいたっていないことから、調査研究の点ではやや遅れているものと評価した。成果の公表については、文献資料研究の成果を大学紀要に投稿することはできているものの、上記の調査研究の遅れにともなって新たな調査結果等の公表には至っていない。以上の点から成果の公表に関してもやや遅れているものと評価した。以上のような研究計画全体の進捗状況を考慮して、平成29年度の本研究課題の実施状況はやや遅れているものと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の研究実施状況を考慮して、文献資料研究、調査研究、倫理的配慮、研究成果の公表に関する研究推進策として以下の点を講じることとした。 1.文献資料研究については、これまでの資料収集と分析の成果を踏まえ、先行知見を収集整理したレビュー論文を神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要に投稿した。また、今後も国内外の幅広い書籍、研究論文の収集と整理を継続し、さらなる知見の集積に取り組むものとする。とくに、認知の偏りやゆがみの測定方法については、継続的に関連する先行研究を収集分析し、本調査研究の手法の確立に資するものとする。 2.調査研究については、昨年度の予備調査の結果から測定手法の再検討の必要性が示唆された。また、先行研究の収集分析の結果、すでに欧米圏の認知行動療法関連の研究を中心に類似の測定尺度が複数報告されていることが明らかとなった。ただし、これらの測定尺度は、表現が抽象的であったり因子構造が不明確であったり等の問題がみられることが同時に示唆された。以上のことから、本調査研究の手法については、先行研究との区別やさらなる妥当性の向上等を目指し、項目内容や測定手法の綿密な検討の上、作成することとする。 3.調査の実施にあたっては、研究の進捗状況の遅れを考慮してより迅速な調査とデータ入力の実施を目指して、インターネット調査等の手法を導入することを検討する。また、調査手法の確立の後に、神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究倫理審査委員会に研究の実施に関わる倫理面の審査を申請し、承諾を得るものとする。 4.成果の公表にあたっては、国内の心理学関連諸学会でのポスター発表、口頭発表、心理学関連の学術専門誌、大学紀要等にレビュー論文、研究論文の投稿をおこなう。その際、神戸大学学術成果リポジトリ等の学術情報データベースを積極的に活用することを通じて、研究成果の効率的で円滑な社会への還元を目指す。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)昨年度の予備調査研究の結果、ならびに文献資料研究の結果を受けて、本調査研究の調査方法を中心に研究方法の再検討をおこなう必要性が生じた。本年度期間中、先行研究を参考に調査手法の確立を試みたが、適切な測定方法の検討に期間を要したため、本年度実施予定であった本調査が次年度にずれ込むこととなった。平成29年度における次年度繰越額は、本来順調に本調査研究の調査手法の確立が進展した場合に必要となった調査用紙の印刷費、調査実施に関わる旅費、調査データの入力と統計分析の補助に必要な人件費、ならびに統計解析ソフトの購入費等が次年度以降に繰り越されたため生じたものである。 (使用計画)平成30年度では、上記の支出も併せて、以下の使用計画に則り研究費を執行する。年度当初より認知の偏りや歪み、とくにその測定方法と関連する臨床症状に関する研究論文を多数取り寄せるとともに、関連する国内外の書籍の購入を継続する。おもに4月から10月にかけて、調査方法を確立した上で、迅速に質問紙調査を実施するためにインターネット調査を関連業者に依頼する。6月頃に得られた調査データの分析の補助のため研究協力者を1名雇用するとともに、必要な統計解析ソフトを購入する。さらに、11月から3月にかけて開催される国内外の心理学関連諸学会に参加し、研究成果の公表を行うとともに同分野の研究者との情報交換をおこなう。
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