2017 Fiscal Year Research-status Report
思春期ASD女子を対象にしたグループプログラムの応用行動分析的検証
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16K04361
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
佐田久 真貴 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (10441479)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 思春期ASD女子 / 応用行動分析 / グループ / 特性理解 / ケース・フォーミュレーション / PARS-TR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は思春期ASD、もしくはその特性のある女子に限定した少人数のグループ活動の実践とその応用行動分析(ABA)的検証が目的である。この実践は、参加女子・保護者・専門家が協働して、女性としての知識・スキルを拡大する機会になるよう設定している。 本年度は、28年度に引き続き参加者の成長に応じた、かつ、グループの構成員の状態に応じたプログラムをアレンジし、2組のグループ活動を実施することができた。参加者の中には、医療機関での診断を女子自身が受けている事例もあるが、保護者のみが把握している事例と確定診断を受けていない事例もある。個々の事例に応じた機能分析に基づくケース・フォーミュレーションが大切となる。「学びの時間」では、ASD等の特性について知識を得ることや、困り感への対処や工夫を話し合い、「エクササイズ」「茶話会」ではいわゆる“ガールズトーク”を体感できる機会になるよう設定した。各グループは月1回程度で開催できた。また、個々の課題に対するABA的介入として、個別カウンセリングも並行に実施する事例もあった。毎回の活動後アンケートは高い評価を得ており、また、保護者からの年度末アンケートも高い評価を得た。 今年度はさらに、保護者によるPARS-TR(親面接式自閉スペクトラム症評定尺度テキスト改訂版)と自作アンケートを用いて、本対象者の幼児期と現在(思春期以降)の比較検証に取り組むことができた。ピーク時よりも現在(思春期以降)の方が得点が上昇した事例、減少した事例それぞれが認められた。診断の有無、学校の特別な配慮等の有無を含めた検証を行うことができた。女子事例は、成長と共に特性が目立たなくなり、支援の手が届かなくなる事例が少なくない。本研究は、社会的にも意義のある研究であると考えており、今後も実践例を積み重ねていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発達障害児者への支援は、発達状態やその時の課題と周囲の環境によってアレンジしていく必要があり、本研究もその理論に沿って実施している。既存グループに新規の対象者を参加させ、症例数は増えた。2つのグループを定期的に実施、今年度も継続することができた。また、個々の課題に対して個別の行動分析的介入が必要だと考えられた際には、保護者面接も含めて個別対応を行うことができた。問題行動への早期介入は、本人のみならず、保護者にとっても効果がある。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の実践例にならい、今年度も進学先で新しく学校生活を開始する参加者たちへは、ケースフォーミュレーションを行い、彼女たちの既存のスキルを発揮できる機会になるようプログラムを実施、介入していく。また、新奇の参加者を増やし、症例の積み上げを行っていく。 また成人を迎える参加者たちは、自身の特性を一層理解していく中で、大人の女性としてさまざまな課題に直面することになることが想定され、本グループについてピアグループとしての側面を重視していることが窺える。生活年齢に応じたグループ運営が、ASD特性のある女子にとって心理面・行動面にどのような影響をもたらせてきたのか、幼児期の特性やこれまでの学校による支援・医療による支援等を含めて検証していく。 また、参加者の中には他のグループメンバーがどのような悩みや困り感を抱いているのか、どのように工夫をしているのかについて、話し合う機会を期待している。自身にとって少し未来に起こり得る出来事を予測し、準備をすることは、行動分析の醍醐味ともいえる。本人と保護者、専門家の協働作業の1つとして位置づけられる機会を設定していく。 ASD等の診断を受けず、自身の努力や周囲の理解で社会生活を送っている人は、やはり少なくない。特に女子の場合はその傾向が強いことから、特性のピーク時と現在の状況を比較する研究を推進していく。
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