2016 Fiscal Year Research-status Report
治療的アセスメントに関する実証的研究:わが国への導入における課題と対応
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16K04368
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
橋本 忠行 香川大学, 教育学部, 准教授 (80320000)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 治療的アセスメント / 臨床心理学 / 心理アセスメント / 質的研究 / 人間性心理学 / 認知行動療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
【論文】 「治療的アセスメントの臨床的有効性に関する実証的研究」のひとつとして、橋本・坂中(2012)を踏まえ「まとめと話し合いのセッション」5事例の録音記録を、人間性心理学で用いられるEXPスケール(吉良他,1992)、AQ-2(Finn et al., 1994)、SEQ-5(Stiles et al., 2002)により質的・数量的に分析した。その結果、EXPスケールのMode値は段階3から段階6に分布し、Peak値は段階6が多かったが1事例のみ段階7も認められ、心理療法としての有効性が認められた。参考値ではあるがAQ-2とSEQ-5からは、Clの高い満足度が示された。セッション内におけるEXP値の時間的推移は認められなかった。Clの発言内容を検討したところ、自己探索、フェルトセンス、そして新たなナラティブの生成といった重要な体験が生じており、ThがClとの関わりを把握する指標となることが示唆された。学術雑誌に投稿し、現在査読中である。 また雑誌論文「クライエントの話から何をどう読み取るのか?-アセスメントの基本」(臨床心理学第17巻1号, 27-30, 2017)では、治療的アセスメント(Finn, 2007)と個別化アセスメント(Fischer, 1985/1994)における、過程(プロセス)を重視したアセスメントの実際について論考した。 【学会発表】 日本心理臨床学会第35回大会自主シンポジウム「治療的アセスメントについて考える(その7)」を企画し、「治療的アセスメントにおけるパーソナリティ・認知特性の理解とCBT技法の活用」という題目で発表した。その中で、治療的アセスメントにおける自己理解のプロセスがセルフ・モニタリングの機会となること、アセスメント介入セッションを中心としたCBT技法の活用が可能であること、等について検討がなされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、これまでの予備的研究を踏まえ、論文投稿と学会発表に取り組んだ。また治療的アセスメントの実践が行われた施設における、研究倫理誓約に関する手続きを進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初平成29年度以降に実施する予定であった「治療的アセスメントの臨床的有効性に関する実証的研究」を先行させたため、平成28年度に予定していた「治療的アセスメントの事例研究(複数)」はその一部にしか取りかかれていない。2年目は事例研究に重みづけを行い、詳細な手続きを提示することにより治療的アセスメントの有効性を更に精緻に検討したい。 また関連した研究課題として、新たに「治療的アセスメント短縮版の開発と適用に関する実証的研究:複数施設における効果検証」(平成29-32年度科研費基盤C)(代表: 宮崎友香 / 分担: 橋本忠行・田澤安弘)が採択された。申請したエフォートに合わせ、両研究計画を実行する。
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Research Products
(2 results)