2019 Fiscal Year Research-status Report
治療的アセスメントに関する実証的研究:わが国への導入における課題と対応
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16K04368
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
橋本 忠行 香川大学, 医学部, 教授 (80320000)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 治療的アセスメント / 協働的/治療的アセスメント / ナラティブ / 質的研究 / 人間性心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度から令和2年度のまでの5ヶ年計画の4年目にあたる。これまでの研究を踏まえ、引き続き論文投稿と著書執筆に取り組んだ。
【論文】小論「心理査定の誤りが発覚…そのときどうする? 協働的/治療的アセスメント」が、雑誌「臨床心理学」(2019、第19巻3号、p.274-276)に掲載された。 心理査定には「情報収集の誤り」と「Clと査定者の関係性の誤り」があると捉え、その両者を検討した。前者については、精神医学的診断の不一致の理由についてSpitzer et. al(1975)が挙げた、①被検者分散、②状況分散、③情報分散、④基準分散、⑤観察分散の中から、心理査定場面との関連が深く、専門職側の要因により生じるものとしての③④⑤をとりあげた。後者については、協働的/治療的アセスメントや情動調律の観点からの考察を行い、心理査定のプロセスにおける情報の「修正」と関係の「修復」が重要であることを、具体例とともに明示した。 【著書】「公認心理師実践ガイダンス1 心理的アセスメント」(橋本忠行・酒井佳永の共編著)を木立の文庫より公刊した。橋本は「序論」「第1章 心理的アセスメントの考え方:プロセス-理解と支援をつなぐ-」「第2章 相談・助言・指導などへの応用:協働的/治療的アセスメント、『関与しながらの観察』と心理的アセスメント」等を担当し、協働的/治療的アセスメントの概念の整理、そして事例提示を行った。そのことにより、協働的/治療的アセスメントの臨床実践を明確にした。また金剛出版の「臨床心理学スタンダードテキスト」(岩壁茂・遠藤利彦・黒田俊秀他編集)(2020秋~冬公刊予定, 印刷中)の「15-心理的アセスメント:11解釈・記録・報告」において、協働的/治療的アセスメントのエッセンスをどのように取り込むことができるか考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が所属する大学では2018年度に新学科(医学部臨床心理学科)を開設し、さらに2020年度に大学院新研究科(医学系研究科臨床心理学専攻)を開設したため、その準備により研究に費やすエフォートが低下した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に取りかかれなかった「治療的アセスメントの事例研究(複数)」について、詳細な手続きを提示することにより治療的アセスメントの有効性を更に精緻に検討したい。また「治療的アセスメントの臨床的有効性に関する実証的研究」に関して、次のステップとしてクライエントと査定者の相互作用の分析に取り組む。また司法領域における協働的/治療的アセスメントについて実践的研究を進める。
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Causes of Carryover |
令和2年度は海外での学会発表や追加機材の購入を予定しているため、令和元年度の予算の一部を繰り越した。
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Research Products
(3 results)