2016 Fiscal Year Research-status Report
パーソナリティ検査における社会的望ましさの影響は何歳から始まるか
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16K04371
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
鋤柄 増根 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (80148155)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 心理検査 / 社会的望ましさ / 反応の偏り / 発達 / 項目反応理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
パーソナリティ検査への社会的望ましさの影響が,自己評定が可能になると思われる前青年期にどのように表れてくるかを検討するために,今年度は,以下のことを実施した。気質調査(EATQ-R)で測定される気質次元の社会的望ましさのと自己開示の程度の測定を,児童・生徒本人(小4から中3)とその母親の計252ペアに実施した。自己開示に関しては,「悲しい」「うれしい」「怒り」の感情を母親にどの程度するかを測定した。自分を「よく」あるいは「悪く」見せかける傾向も検討した。その結果,自己開示は年齢が上がるにしたがって減少し,「よく」あるいは「悪く」見せかける傾向は増加することがわかった。母親は,自分の子どもが自己開示をしており,より正直であると考えており,子どもの認識とはズレていた。また,気質次元に対する母親と児童・生徒の社会的望ましさの評価も異なっていた。 母親に代表される大人は,彼らが属している社会が望む気質やパーソナリティに関して十分学習していると考えられるので,母親と子供のずれの原因として,文化の反映としての社会的望ましさがあると考えられる。したがって,以上の結果は,年齢による社会的望ましさの影響が異なることを示唆しているといえる。 さらに,社会的望ましさについては,項目反応理論の多値回答モデルのGPCM(Generalized Partial Credit Model)によって,気質次元(下位尺度)の社会的望ましさの程度については,大学生のデータを解析し,項目反応理論に基づた推定を行っている。上記の児童・生徒の結果と大学生のものを利用して,両群の間にDIF(different item function)が存在するかを検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
児童・生徒と母親のペアデータが得られたことと,大学生と中学生のデータが得られたことは,データ収集という点からは順調といえる。しかし,質問の仕方などに改善すべき点もあることがわかってきたので,その点修正すべきである。また,今回の分析手法より,より適切な分析手法の検討をすべきこともわかってきたので,これも十分といえない点である。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度で問題となった点を修正した同様な調査を,継続的に調査協力してもらえる小中学生と保護者のペアに,郵送にて配布・回収する予定である。 28年度に収集したデータの詳しい解析をするが,社会的な望ましさと自己開示の程度が気質の本人評価と保護者の評価のズレにどの程度影響しているかについて横断的な検討をする。潜在構造方程式モデルを使った分析を中心とする。この分析によって,社会的望ましさの影響が成人と同じような影響になる年齢を明らかにする。
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Causes of Carryover |
調査の謝金を,他の研究費から支出できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査の謝金として使用する予定。
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