2017 Fiscal Year Research-status Report
社交不安症に対するエクスポージャーの治療効果を最大化する技法の開発
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16K04372
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
金井 嘉宏 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (60432689)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社交不安症 / 社交不安 / 認知行動療法 / エクスポージャー / マインドフルネス / 注意 / 向社会性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,向社会性を高める慈悲の瞑想,マインドフルネス瞑想(ボディスキャン),Wellsが開発した注意訓練の効果比較研究を行った。 社交不安者は,対人場面において動悸や震えといった身体反応,および失敗を予期するような後ろ向きな思考など,自分に注意を向ける傾向があり,それが社交不安を維持・増悪させていると考えられている。そこで,社交不安症に対する現在の認知行動療法では,他者やスピーチ内容など,外部刺激に注意を向ける注意訓練が提唱されている。一方,最近注目されているマインドフルネスは,自分の身体感覚に注意を向けることを促す方法であり,注意を向ける方向が注意訓練と矛盾する。さらに,他者を慈しむ態度をもって注意を向ける慈悲の瞑想も提唱されており,理論的背景も異なる複数の方法があることから,いずれの方法がもっとも効果的であるのか問題となっていた。本研究はこの問題について,2週間にわたるトレーニングと実際の対人場面を用いた実験によって検討した。Liebowitz Social Anxiety Scale日本語版を用いてスクリーニングされた社交不安の高い大学生37名が実験に参加した。慈悲の瞑想群9名,マインドフルネス群9名,注意訓練群10名,統制群9名であった。統制群を除く各群には音声を用いたトレーニングを2週間行うことを求めた。その結果,慈悲の瞑想群においてのみ,2週間後のLSAS回避得点が減少しており,慈悲の瞑想を行うことによって対人場面の回避が減弱することが示された。一方,グループディスカッションを用いた実験場面では,対人交流中の感情面に群による違いはみられなかった。したがって,慈悲の瞑想の効果は,不安感情ではなく,回避において見られることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慈悲の瞑想,ボディスキャンによるマインドフルネス瞑想,注意訓練の効果比較研究によって,慈悲の瞑想が回避行動に効果的であることが実験研究によって示された。慈悲の瞑想をはじめとした向社会性を高める介入をエクスポージャーと併用することが,既存の治療法の効果を高めるかどうかを検討する上での基盤となる研究成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
向社会性を高める介入をエクスポージャーと併用することが,既存の治療法の効果を高めるかどうかを実験的に検討する。その際,向社会性を高める介入を行っているときの脳波(前頭部α波左右差)を測定し,実験参加者の接近・回避状態をアセスメントするとともに,脳波によって測定された接近・回避状態とエクスポージャーの効果の関連も明らかにする。
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Causes of Carryover |
出張旅費の支払いが1回分減じたために生じた。次年度に旅費として使用予定である。
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