2016 Fiscal Year Research-status Report
不信の4層モデルにもとづく難治性疼痛の医療者不信の把握と改善に向けた短期縦断研究
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16K04375
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
義田 俊之 国際医療福祉大学, 福岡保健医療学部, 講師 (60585933)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細井 昌子 九州大学, 大学病院, 講師 (80380400)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 慢性疼痛 / 医療不信 / アレキシサイミア / 愛着スタイル / 痛みの破局化 / 思考コントロール方略 / 心身症状 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性疼痛患者において,医療不信と,どのような心理的変数がどのような関連を持つのかは未だ明らかではない。そこで,平成28年度には,慢性疼痛患者において,VASで測定した医療不信と,多様な心理的変数との関連を検討した。 第一に,痛みの破局化との関連では,医療不信が強いと,痛みの破局化傾向,および拡大視,無力感,反すうのが全て強かった。第二に,さまざまな心身症状との関連では,医療不信が強いと,①対人的問題を反映する対人過敏性,怒り/敵意,パラノイア的思考が強く,②ネガティブな感情を反映する抑うつ,不安も強く,③身体症状,強迫,精神病傾向も強かった。第三に,慢性疼痛の背景要因であるアレキシサイミア傾向との関連では,医療不信が強いと,アレキシサイミア傾向,特に感情の同定困難が強かった。第四に,「医療不信」とは,医療場面における援助希求の問題であると考えられることから,本研究課題で初めて,援助希求の変数である愛着スタイルとの関連を調べた。その結果,医療不信が強いと,愛着の自己観得点が低かった。 以上から,医療不信が強い慢性疼痛患者は,痛みの破局化が著しく,さまざまな心身症状を抱えており,自己の不快感情の気づきにくく,「困ったときに自分は援助されるに値しない」と感じていることが分かった。彼らは,種々の苦悶を抱えつつ,援助を求めることをためらうという板挟みに陥っていることが示唆された。 さらに,痛みの破局化は,しつこく頭を悩ます雑念であることから,そうした雑念との付き合い方である思考コントロール方略との関連も検討した。その際,健常群との比較も行った。その結果,健常群では、罰(雑念を考える自己を責める)が強いと破局化が強かった。これに対し,臨床群では,気晴らし(無関係な事に注意を移す)が弱いと破局化が強く、心配(別の心配事に置き換える)と罰が強いと破局化が強かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予備的な調査データの分析を行ったところ,医療者不信と痛みの破局化,心身症状,アレキシサイミアとの関連については,概ね,仮説を支持する結果が得られた。また,痛みの破局化と思考コントロール方略との関連についても,我々の先行研究と類似した結果が得られた。 しかしながら,慢性疼痛患者における医療者不信が,他者に対する不信ではなく,自己に対する不信(自分は困っていても援助されるに値しない)であるという,当初の想定とは異なる結果も得られた。そのため,妥当性を検証する複数の質問紙の再検討が必要となっている。また,医療者不信を測定する質問項目を開発するために,慢性疼痛患者がこれまで受けた医療に対して抱く思いの自由記述を,量的,質的の二つの観点から精細に分析する作業に期間を要した。そのため,本調査実施が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は速やかに本調査を実施する。
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Causes of Carryover |
平成28年度に医療者不信を多面的に捉える質問紙を開発し,妥当性を検証する複数の質問紙とともに調査を実施する予定であった。しかし,過去に収集した予備的な調査データの分析を行ったところ,慢性疼痛患者における医療者不信が,他者に対する不信ではなく,自己に対する不信(自分は困っていても援助されるに値しない)であるという,当初の想定とは異なる結果が得られた。そのため,妥当性を検証する複数の質問紙の再検討が必要となり,調査実施が遅れたため,未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度には調査を実行するため,未使用額は協力者の謝金等に宛てたい。
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