2017 Fiscal Year Research-status Report
実行機能と模倣抑制訓練による個人的苦痛と共感過覚醒低減効果の検討
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16K04378
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
佐伯 素子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (80383454)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 共感性 / 模倣抑制傾向 / 被影響性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の共感に関する神経基盤研究の知見から,実行機能によるトップダウン処理や模倣抑制による視点取得能力の向上が共感過覚醒や個人的苦痛を調節し,結果として共感疲労や逆転移による行動化を防止することができると考えられる。カウンセリング場面では,クライアントの姿勢や動きをカウンセラーが知覚することによってクライアントと同じ情動を共有体験し,刻々と変化するクライアントの情動をモニターしながら,よりクライアントの理解が深まっていく。しかし,Vyskocilova et al.(2011)によれば,共有体験がクライアントの情動理解の助けともなるが,逆転移による行動化をもたらす危険性があるという。これらの先行研究の知見より、平成29年度では二つの研究を実施した。 Santiestereban et al.(2012)は,自己と他者表象の共有によって起こる模倣を抑制することによって,物理的視点取得能力が向上することを示している。このことから,模倣抑制傾向が高いほど共感性の要素である他者視点取得能力が高くなり,自分自身の不安や苦痛といった自己指向的反応よりも他者に対する思いやりなどの他者指向的反応が高まる可能性が推察される。一方,模倣傾向が高いほど,周囲の感情の影響を受けやすく,個人的苦痛が高まり,自己指向的反応は強くなると考えられる。そこで、共感性の各要素と模倣傾向との関連を検討した。その結果,共感性の被影響性が強いほど模倣傾向が強いことが示唆された。 また,他者の表情を正確に認知し,自己と他者を区別し,他者の視点に立つことが可能となると考えられており,先行研究でも検討されている。共感疲労や共感過覚醒の低減のために,表情認知訓練の可能性も考えられた。そこで,共感性と他者の表情認知の正確性について検証した結果,ポジティブ表情において共感性得点が高いほど正答率が有意に高いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究を参考に模倣課題を作成し,それを使用して実験を行い,結果を公表した。これらの点は当初の計画通りに進んでいる。一方,平成30年度実施する予定のNIRS(近赤外光イメージング脳機能測定)による実験に関しては,呈示する刺激映像の作成途中にあり,この点に関しては当初の計画より遅れている。しかし,完成の目途もたっており,実験協力者の募集も始めている。全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
NIRS(近赤外光イメージング脳機能測定)による実験を始めるために,実験に使用する映像を完成し,実験協力者の募集を行っていく。加えて,他者視点取得能力を測定する実験課題の作成を進め,平成30年度には他者の苦痛場面に対する脳の血流変化の測定,他者視点取得能力の実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
実験ソフトウェア購入にあたって,当初の予測よりも安価に購入できた。平成30年度では,実験や調査実施による協力者への謝金や地方への学会参加のために使用する予定である。
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Research Products
(2 results)