2018 Fiscal Year Research-status Report
実行機能と模倣抑制訓練による個人的苦痛と共感過覚醒低減効果の検討
Project/Area Number |
16K04378
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
佐伯 素子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (80383454)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 共感性 / 認知的共感 / 情動的共感 / 模倣抑制 / 視点取得 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、心理臨床場面において問題となる共感過覚醒や共感疲労と模倣傾向や実行機能との関連を検証し、共感過覚醒や共感疲労の低減のための訓練に関して検討することを目的としている。平成30年度では、平成29年度に作成した模倣(抑制)傾向を測定するための実験課題を用いて、研究を実施した。 この研究では、共感過覚醒との関連が予測される模倣傾向と共感性の個人的苦痛との関連を検証した。模倣傾向が高いほど他者の負感情に対して苦痛を感じる傾向である個人的苦痛得点が高くなると仮定した。49名の大学生を対象として、まずInterpersonal. Reactivity Index (IRI: 桜井, 1988)に記入を求め、その後、模倣抑制課題を行った。その結果、模倣傾向が高いと個人的苦痛得点が低くなるという結果となった。自己と他者表象の共有によって起こる模倣は個人的苦痛を高めるものと推測されたが,逆の結果となった。鈴木・木野(2008)によれば,IRIにおける個人的苦痛項目のほとんどが緊急の事故や突発の出来事に対する反応傾向をたずねており,必ずしも他者の苦痛を想起させるものではないと指摘している。IRIの個人的苦痛が目の前の他者の苦痛の表出に対して苦痛が喚起される傾向を測定していないことから関連がみられなかったとも考えられた。共感性の尺度に関して再度検討する必要がある。この研究の結果は平成31年3月に開催された第30回日本発達心理学会で公表した。 また、認知的共感をもたらす他者の視点取得を測定するための課題を選定し、Freundilieb, Kovacs & Sebanz(2016) を参考に,空間的視点取得課題を作成し、この課題の成績と共感性尺度の認知的共感との関連について検証するための実験を実施した。平成31年度に公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
模倣抑制や視点取得課題の作成とそれら課題を使用し、共感性との関連を検証する研究に時間がかかってしまった。実験協力者の募集と実験時間の確保が困難であった。そのために、平成30年度に実施する予定であった模倣抑制および実行機能訓練の開始が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は本研究の最終年度にあたる。実行機能や模倣抑制が情動的共感を調節し,他者の視点に立ち,心情を理解する認知的共感を促すように機能するのかどうか、一連の研究から検証していくことが今年度の目標となる。 まず、平成30年に実施した視点取得と認知的共感との関連に関する研究をまとめ、6月の国内学会にて公表する。研究結果より空間的視点取得課題の妥当性を検討し、必要とあれば新しい課題の作成を行う。 次に平成30年度に実施する予定であった模倣抑制訓練と実行機能訓練を開始する。その後、当初より本年度に実施を計画していた模倣抑制訓練,実行機能訓練による個人的苦痛と共感過覚醒低減の効果検証を行う。具体的には模倣抑制課題を用いた訓練(Brass et al.,2001)とSiegle et al(2007)を参考とした実行機能訓練を行い、その後効果検証として自己報告による効果検証と認知的共感に関連する脳部位の活動を測定する。その結果を平成32年度の国内学会で公表していく予定である。
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Causes of Carryover |
実験協力者への謝礼として購入する文具の代金が当初の計画より少なくて済んだために次年度使用額が生じることとなった。次年度は最終年度にあたるため資料等の保存のためのファイル購入にあてる予定である。
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