2016 Fiscal Year Research-status Report
ユマニチュードによる自閉症児の症状緩和効果に関する実験的研究
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16K04380
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
山口 創 桜美林大学, 心理・教育学系, 教授 (20288054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 美和子 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 医長 (40575263)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ユマニチュード / 自閉症スペクトラム障害 / 身体接触 |
Outline of Annual Research Achievements |
ユマニチュードは知覚・感情・言語による包括的ケア技術であり、その技術を応用するためには、要因分析的な基礎研究も必要となる。そこで本研究では、触れることが心身の及ぼす影響について女子大学生を対象として検討した。実験参加者は女子大学生28名とした。参加者を2群に分け、実験群(タッチ群:肩・背中群及び両脚群)に対しては、安静時、ストレス課題後、タッチ後の3回、下記の指標について測定した。生理指標(心拍数、脳活動)、心理指標(TDMS、身体感覚受容感尺度、RE尺度、VAS尺度)であった。ストレス課題は、5分間の暗算課題とした。統制群は、タッチ群におけるタッチ時間(8分間)、安静にしていた。 実験の結果、タッチ群は統制群よりも、ストレス後の心拍の低下が顕著であることがわかった。また「肩・背中」にタッチすることが心拍数を低減させる効果が大きいこともわかった。また肩+背中へのタッチは安心という心の落ち着きに繋がる可能性があると考えられた。また介入群の「安定度」はベース後からストレス課題にかけ有意に低くなり、タッチング後に有意に高くなった。同様の傾向は「快適度」についてもみられた。さらにタッチ群は統制群よりも「快適さ」「新鮮な」「生き生きした」の項目得点が上昇していた。以上の結果から、ユマニチュードの効果を要素に分析した場合、タッチングの影響はストレス軽減効果が大きいこと、そして単なるリラックス効果ではなく、覚醒を高めて安定度や快適度も上昇するといった、最適な心理状態に導く効果もあることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は、当初の予定通り、研究計画の概要について確認し、倫理申請について許可を得、参加者募集の段階まで進めることができた。倫理申請については予定よりもやや時間を要してしまったため、これから全体的に計画を早めて行う必要があると考える。 また、進捗の遅れている部分としては、参加者が家庭でユマニチュードを行うための冊子の作成とビデオの作成については、未だ取り組まれていない課題であり、早急に開始する必要がある。 冊子の作成については、既存の著作や雑誌などから作成することが可能である。この点については、ビデオの作成については行わず、またASD児の症状は個人差が大きいことがわかっているため、症状を要素に分割し、それぞれの症状に応じたユマニチュード的な介入を行う方法をカードで簡単に説明したものを複数枚作成し、参加者の症状に応じて当てはまる症状に対する介入方法が書かれているカードを、初回の段階で手渡す方法をとることとする。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、ユマニチュード的な介入方法を記載したカードを複数枚準備することから開始することとする。ユマニチュードの介入を行う看護師は3名の承諾を得ているが、ASD児への介入は初めてでもあるため、練習も必要である。 当初予定していなかった、自閉症スペクトラム障害児(ASD児)の視線の軌跡を追尾する方法については、予備実験の段階で確認することが必要である。 さらに、ASD児にユマニチュードを施術することにより生じると予想される症状の変化については、専門家の協力を得ることができた。そのため、専門家とも綿密な打ち合わせをし、単なる印象評定に留まらず、どのような領域における症状の改善が認められたのか、客観的に測定する予定である。 さらに、実際に応募される参加者数が未知数であるため、統計的な解析をかけることが可能であるか、についても課題である。 参加者数が十分に確保できなかった場合は、事例研究などの方法で結果を出す必要がある。
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Research Products
(1 results)