2016 Fiscal Year Research-status Report
刑事事件における犯罪心理鑑定の意義と有効性についての研究
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16K04399
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Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
橋本 和明 花園大学, 社会福祉学部, 教授 (80434687)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 犯罪心理鑑定 / 情状鑑定 / 犯罪心理学 / 非行臨床 / Mitigation Specialist / 少年事件 / 裁判員裁判 / 刑事事件 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.弁護士及び臨床心理士の資格のある研究協力員5名とともに,犯罪心理鑑定についての学習会を定期的に開くとともに,鑑定のできる臨床心理士を養成するため,平成28年5月から平成29年2月までの期間に計6回,研修会を開いた。そこでは,28名の臨床心理士の資格のある受講生が集まり,鑑定の理論,方法,実務の問題点,今後の課題について学んだ。(この研修会は平成29年度も実施することになっている。)また,研究代表者は平成29年3月11日,日本臨床心理士会臨床心理講座において,「犯罪心理鑑定講座」の講師となり,鑑定のできる臨床心理士の養成を行った。 2.平成28年8月26日,大阪弁護士会とともに,「犯罪心理学鑑定のあり方と今後の展望」というテーマでシンポジウムを開催した。弁護士,臨床心理士等,計80名程の参加があり,弁護士と臨床心理士の協働のあり方などが検討された。 3.平成28年9月11日から同年9月19日まで,研究代表者はアメリカのサンフランシスコ及びシアトルに渡航し,アメリカの裁判所の見学と裁判傍聴をするとともに,Probation OfficerやMitigation Specialistにインタビューを実施し,その仕事内容と役割,現状と課題,今後の展望などについて調査した。 4.研究協力員とともに,犯罪心理鑑定の要請があれば迅速に対応し,すぐに臨床心理士を派遣できるシステムの構築を目指し,独自の組織の立ち上げを検討し,その組織作りの構想を固めた。平成29年度は実際にそれを設立し,犯罪心理鑑定をそこで引き受けていくという計画を進めている。 6.平成28年8月,研究代表者が編著した『犯罪心理鑑定の技術』の書籍を刊行し,鑑定の理論と実際についてまとめた。今後は鑑定を進めるに当たってのより具体的なマニュアルを作成したり,一般市民や裁判員にもわかりやすい犯罪心理鑑定の書籍の刊行を進める計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.研究協力者と定期的な話し合いを行い,研究の課題や研究の進め方を随時検討し,全体として順調に進展している。弁護士と臨床心理士の協働のあり方についても新たに組織を設立して鑑定を実施する見通しである。 2.研究の申請時の計画で上げていたように,アメリカに視察に行き,そこでProbation OfficerとMitigation Specialistの専門職にインタビューをすることができた。また,日本の犯罪心理鑑定との比較や鑑定を進めていくための技術についても多くのことを学べ,本研究の目的の一つが達成できた。 3.犯罪心理鑑定について,弁護士や臨床心理士に広く理解を求め,鑑定ができる臨床心理士の養成を目指して,研修会や講座を複数回開けたことは大きな成果であり,反響もあった。また,そこで使用した学習教材や資料等の蓄積はできたが,現段階ではそれをまだまとめる段階には至っていない。今後は臨床心理士が鑑定を実際に進めていくためのマニュアルとして冊子あるいは書籍としてまとめていきたい。 4.今年度,研究代表者は1件の犯罪心理鑑定と別の1件の民事心理鑑定を実施した。前者は被告人が少年で裁判員裁判になった事件で,後者はいじめの被害者が訴訟提起した民事事件である。これらの事件はもとより,研究代表者がこれまで実施してきた鑑定事例を整理し,鑑定事例分析を行う計画をしている。 5.弁護士を対象に犯罪心理鑑定についての意識調査を実施する計画を立てている。現在まで調査項目についての作成は完了したが,今後は倫理申請などの手続きを経た後,調査対象者にそれを調査用紙を発送する予定であり,今年度中には結果をまとめて分析したい。
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Strategy for Future Research Activity |
1.大阪弁護士会に所属する弁護士を対象に犯罪心理鑑定についての意識調査を平成29年7月までに実施し,今年度中にそれを分析して論文としてまとめたい。また,その後は,大阪以外の弁護士にも調査対象を拡大し,全国的な規模での意識調査をすることも視野に入れて取り組みたい。 2.犯罪心理鑑定ができる臨床心理士を養成するため,今年度も計6回の研修会を開催する計画をしており,特に今年度は鑑定を実施する際のマニュアル作りや裁判での鑑定人の証言のあり方をイメージしやすいように,裁判官役,弁護人役,検察官役のいる法廷場面を想定し,鑑定人が証言しているロールプレイをビデオを教材として作成する計画もしている。 3.平成28年度に引き続き,犯罪心理鑑定の理解を深めようと,弁護士会と協賛してシンポジウムを開催する計画をしている。今回は犯罪心理鑑定に限らず,民事事件や家事事件への臨床心理士と弁護士の協働のあり方についてテーマとする。 4.平成28年度はアメリカに視察に行ったが,ヨーロッパの裁判制度についても知る必要があると考え,平成29年9月にフランスに渡航し,裁判所の見学や傍聴,弁護士へのインタビューを実施し,犯罪心理鑑定に参考となることを聴取する。 5.研究代表者がこれまで実施した鑑定事例を分析し,刑事事件における有効な鑑定のあり方や裁判員裁判等での証言のあり方などについてまとめる。
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Causes of Carryover |
1.平成28年9月11日から同年9月19日までの期間にアメリカの裁判所や裁判傍聴等の視察をしたが,当初計画していたよりも安価な使用額で実施できたためである。 2.弁護士への犯罪心理鑑定についての意識調査が当初よりも計画が遅れ,調査用紙の発送が実現できていない。そのため,その郵送費用等の諸費用が未使用となっているためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.平成29年9月1日から9月10日までの期間,フランスの裁判所見学や裁判傍聴を実施する計画であり,フランスにおける犯罪心理鑑定の有無等について弁護士や元裁判官にインタビューを行う。 2.平成28年度に発送まで実現しなかった弁護士への意識調査を平成29年7月までに実施し,今年度中にその結果をまとめ分析する。
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Research Products
(8 results)