2017 Fiscal Year Research-status Report
刑事事件における犯罪心理鑑定の意義と有効性についての研究
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16K04399
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Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
橋本 和明 花園大学, 社会福祉学部, 教授 (80434687)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 犯罪心理鑑定 / 司法心理学 / 対人援助職 / 情状鑑定 / 犯罪心理学 / 裁判員裁判 / 非行臨床 / 少年事件 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.研究代表者は弁護士及び臨床心理士の資格のある研究協力員とともに,犯罪心理鑑定についての学習会の機会を持ち,鑑定のできる臨床心理士の養成のため,平成29年6月から平成30年1月までの期間に計6回,研修会を開いた。研修には毎回25名の臨床心理士が参加し,鑑定の理論,方法,実務の問題点,今後の課題について学んだ。また,研究代表者は平成30年1月6日,日本臨床心理士会臨床心理講座において,「犯罪心理鑑定講座」の講師となり,鑑定のできる臨床心理士の養成を行った。 2.平成29年7月22日,大阪弁護士会とともに,「対人援助職と弁護士とのさまざまな協働のあり方を考える-学校でのいじめ事件,子との面会交流事件編-」というテーマでシンポジウムを開催した。弁護士,臨床心理士等,計80名程の参加者とともに,弁護士と臨床心理士の協働のあり方などを検討した。また,平成29年9月20日,民間総合調停センター企画において,研究代表者は「対人援助職の問題解決に向けた事実へのアプローチ」というテーマで研修を行った。 3.平成28年9月1日から同年9月9日まで,研究代表者はフランスのコルニモン及びパリに渡航し,フランスの裁判所の見学と裁判傍聴をするとともに,フランスの裁判官1名,弁護士1名にインタビューを実施し,フランスの司法事情(特に,重大事件における裁判事情や少年事件の状況)などについて聞き取り調査をした。 4.研究協力員とともに,司法の分野で支援を要する人に対して,心理鑑定や心理的支援,心理的援助を行うことことを目的に,一般社団法人司法心理研究所を平成29年7月4日に設立し,大阪地方法務局に登記をした。 5.平成29年7月から平成30年1月までの期間,「犯罪心理鑑定(情状鑑定)と対人援助職との協働についての意識調査」を大阪弁護士会に登録している弁護士を対象に意識調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.研究協力者と研究の課題等について随時検討し,当初計画していた弁護士等の司法関係者と臨床心理士との協働ができるシステム作りの一環として一般社団法人司法心理研究所の設立が実現するに至った。これは協働を考える上では大きな研究成果と言える。 2.平成29年度はフランスに視察に行き,そこで裁判官,弁護士にインタビューをすることができ,フランスの司法事情について学ぶことができた。昨年度のアメリカ視察と比較することができた。 3.犯罪心理鑑定講座などを開催したり,シンポジウム等を積極的に企画することによって,弁護士や臨床心理士にしだいに犯罪心理鑑定の意義について理解が広がってきている印象を受けている。また,今後はますます司法における対人援助職との協働の重要性が増すことを論文等で記載もできたことが成果の一つでもある。ただ,今年度中に研修等で使用するテキストや模擬裁判のDVD作成などの学習教材を作成する予定でいたが,現段階では準備の段階にとどまっており,来年度にはそれが完成するようにしたい。 4.今年度,研究代表者は2件の犯罪心理鑑定と2件の家事事件の心理鑑定を実施した。前者は被告人が少年で裁判員裁判になった事件と成人の窃盗在宅事件であり,後者は離婚や面会交流等で裁判や調停になっているものである。研究代表者がこれまで実施してきた鑑定事例を整理し,弁護士等との協働の具体的なあり方,鑑定書の記載の方法と留意点,法廷での証言のあり方など鑑定実施の際の問題点を事例分析を通じて行いたいと考えている。 5.弁護士を対象に意識調査を実施したが,第1回は回収率が低く,再度,改めて同じ意識調査を行った。そのため,結果等の分析は当初の計画よりもやや遅れている。来年度には調査結果をまとめ,論文として投稿するとともに,発表を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.弁護士を対象に犯罪心理鑑定についての意識調査の結果をまとめ,それを研究論文として作成し,それを学会等の研究誌に投稿をする予定である。(すでに投稿の申請はしている)。 2.犯罪心理鑑定ができる臨床心理士を養成するため,今年度はまる1日をかけての研修を京都と大阪で計2回開催する計画である。そして,その学習の教材として,鑑定実施マニュアルを作成することや,模擬事例を作成し,鑑定人の証言のあり方を具体的かつ視覚的なものを通じて学習しやすいようにDVDを作成することを考えている。DVDにおいては,大阪弁護士会の模擬法廷で,裁判官,裁判員,弁護士,検察官などをロールプレイをして収録する予定である。 3.平成28年度,29年度に引き続き,犯罪心理鑑定等の理解をより多くの弁護士及び臨床心理士に広めようと,弁護士会と協賛してシンポジウムを開催する計画をしている。 4.平成30年度はアイルランドで開催される2018年ソーシャルワーク・社会開発合同世界会議に出席し,日本の司法制度におけるソーシャルワーカーの現状と課題についてポスター発表を予定している。また,同時期にイギリスの司法事情について知るため,ロンドンの裁判所を見学するとともに,裁判を傍聴する計画である。 5.研究代表者がこれまで実施した鑑定事例を分析し,弁護士等との協働の具体的なあり方,鑑定書の記載の方法と留意点,法廷での証言のあり方など鑑定実施の際の問題点を検討し,この3年間の科研費による研究の成果として,刑事事件における犯罪心理鑑定の意義と有効性についてまとめる。
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Causes of Carryover |
(理由)1.平成29年9月2日から同年9月10日までの期間にフランスの裁判所の視察(裁判傍聴等)や裁判官,弁護士へのインタビュー調査を実施したが,当初計画していたよりも安価な使用額で実施できたためである。2.弁護士への犯罪心理鑑定についての意識調査を実施したが,当初計画していたよりも調査用紙の発送の郵送料等の諸費用が安価ですんだためである。3.犯罪心理鑑定のマニュアル作成及びDVDなどの教材作成をする予定であったが,実施するには至らず,その諸費用が使用できなかったためである。 (使用計画)1.平成30年6月30日から7月8日までの期間,イギリスの裁判所見学(裁判傍聴等)を実施するとともに,アイルランドで開催される2018年ソーシャルワーク・社会開発合同世界会議に出席してポスター発表を予定している。そのための旅費,滞在費,国際学会への参加費等の諸費用として使用する予定である。2.犯罪心理鑑定のマニュアル作成及びDVDなどの教材作成をするための諸費用として使用する予定である。3.研究の総まとめとして,弁護士に対して実施した意識調査などを報告書として作成し,その費用として使用する予定にしている。
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Research Products
(9 results)