2018 Fiscal Year Research-status Report
女性乳がん体験者の病の体験過程およびそれに関わる要因についての心理臨床学的研究
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16K04402
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
駿地 眞由美 追手門学院大学, 心理学部, 准教授 (10388217)
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Project Period (FY) |
2017-02-23 – 2020-03-31
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Keywords | 若年性乳がん / 病の体験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「若年性乳がんサバイバ―が、若年性であることや周囲の人々との関係における相互作用の中で、乳がんという病を生きるプロセス」を検討するための研究を行った。 具体的には、NPO法人「健康と病いの語りディペックス・ジャパン」による「健康と病いの語りデータアーカイブ」のうち、診断時35歳未満の女性乳がんサバイバ―6人(診断時の平均年齢29.0歳、SD=4.00)の語りデータを用いて、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(木下,2003;2007)による分析を行った。 結果、しこりや痛みという[異変に気付く]ことから【病を受け入れる過程】は始まるが、〈知識・情報の乏しさ〉などにより、往々にして受診や診断が遅れ、また、<進行の早さ・悪性度の高さ〉や〈準備のなさ〉もあり、告知は大きな衝撃となりやすい(【若年性という要因】)。治療も苛酷なものとなりやすく、乳がんは[生活・人生の転機としての病]として体験されることとなる。診断・告知後は、〈外見の変化へのショック〉や〈女性性の傷つき〉〈副作用との闘い〉など、さまざまな[治療のつらさ]に直面することになるが、〈結婚・妊娠・出産への不安〉も、若年性サバイバーならではの悩みである。そして、こうした不安や苦痛をさまざまに経験しながらも、[治療のつらさに対処]し、[治療に主体的に取り組む]ようになるのであるが、こうしたプロセスを循環しながら病を体験していく過程は、まさしく【病と共に生きる過程】であり、〈再発・転移の不安〉など[生涯続く不安]をもちつつも、[自分の存在意義]や[病の意味]を見出だし、〈希望を持って生きる〉ことを選び取っていく。こうした主体的な営みは『関係を生きる』ことと相互作用しながら進み、【関係の変化】や【関係の中で傷つく】こともありつつ【関係の中で支えられる】体験を繰り返すことで、『病を生きる過程』が促進されると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、乳がんという病の体験の様相とそれに関わる要因を量的に分析することを目的としたweb調査を行う予定であった。それが完遂できなかった点では「やや遅れている」と言えるが、これは、量的調査の前に、ライフステージの中での乳がんの体験を質的に精査する必要性を感じ、その研究を行うためであった。よって、研究全体としては、おおむね順調であると言える。なお、web調査の準備は完了し、すぐにでも実施できる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
乳がんサバイバー500人を対象としたweb調査を実施するための手はずをすでに整えている。データを回収次第、その分析を行い、乳がんという病の体験の様相とそれに関わる要因を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
本年度はweb調査を行う予定であったが、研究計画の変更により、今年度は実施しなかった。それについては次年度に実施する予定である。
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