2016 Fiscal Year Research-status Report
未就学児の感情コントロールの発達を促す保育者による支援
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16K04414
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Research Institution | Kawaguchi Junior College |
Principal Investigator |
加藤 邦子 川口短期大学, その他部局等, 教授 (40617784)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池邨 清美 (近藤清美) 帝京大学, 文学部, 教授 (80201911)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 不快感情 / 感情調節 / 保育者の介入 / 関係性 / 敏感性 / コミットメント / 子ども同士のトラブル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、保育現場における子ども同士のトラブルをめぐり、子どもが表出する不快感情を保育者・親はどう抱えるか、それが未就学児の感情調節の発達にどのように影響するかを明らかにすることが目的である。 今年度は、「保育現場で生じる子ども同士のトラブルに関する聴き取り調査」を実施する計画を立てたことから、①インタビューガイドを作成した。インタビューガイドの主な内容は、保育者による子どもの感情の諸側面への働きかけの実際、トラブル時への対応、及びその理由づけ(園の環境や場面、子どもの特徴、保護者の養育状況、保育者の要因など)である。 保育者に対して、子どものどのような感情の側面について、どのような具体的場面で子どもにその感情が生じているか、また保育者はどう対応しているのか、またその対応をした理由について、インタビューで聴き取りをした。都内8ケ所の保育所に調査依頼し、3歳未満児保育を担当する保育士18名にインタビュー調査を行った。その結果、3歳未満児の不快感情について保育者がその内容について気づくことができ、豊かに語ることができる保育者は、子どもとの関係性を土台にして、子どもが自分自身の感情や他児の感情を理解できるように働きかけ、生活・遊び場面で、気持ちを表現する機会を設け、感情をより社会化するよう援助し、子どもが嫌な感情や苦痛な状況に対して対処できるように働きかけるという仮説についておおむね妥当であることが確認できた。保育者が、3歳未満児の快感情、興奮、不快感情に対して、どのように捉え、理由づけをし、対応・工夫しているのか、保育者による実際の介入場面について質的研究の手法を用いて詳細に分析した。 その際に、関係論の立場に立ち、子どもの快・不快感情に対して、子どもの自発性の尊重、敏感性、適度な限界設定、及びコミットメントの視点から、保育者の介入について分析する研究方法の妥当性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
保育現場において,子ども同士のトラブルを巡り、子どもの感情調節の発達を促す保育者の介入の実際について、子ども同士が不快感情を示す具体的場面、親の要因、保育者の介入・役割について、保育者がどう捉えているのかを明らかにすることが、本研究の目的であった。 本年度は、子どもの感情調節の発達を促すために、保育者が重視している側面について、研究費を活用し国際学会に参加することで、Saarni, C. の流れを継ぐ研究状況を理解することができた。 本研究では、関係論を援用して、保育現場での3歳未満児の感情調節の発達を促す保育実践のあり方について検討する課題に取り組んでいる。都内の保育所の協力を得て、18名の研究協力者の承諾を得、保育士のインタビュー調査を実施し、テープ起こしは終了して、データをもとに質的分析を行ったところである。 現在、質的分析の結果をもとに、「保育所における3歳未満児保育における感情調節の援助(1)子どもの対人感情の表出と保育者の援助、及び(2)子どもの感情調節の方略における保育の素朴理論」というタイトルで、9月に開催される第81回日本心理学会大会(久留米大学)で研究代表者と研究分担者とで研究発表を行う予定である。 文献研究により、研究レビューを行った。それをもとにインタビュー調査を実施し、データを得て、質的研究を進めてきており、順調に研究が進められていると評価できる。関係論の立場から、未就学児の感情調節の発達とその援助について、さらに考察をふかめていくことができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
貴重なインタビュー調査を実施することができたので、その分析を深めて、新たな知見を得る。 未就学児の感情調節の発達と保育現場での援助について、どのような感情の側面について、どのような具体的場面で子どもにその感情が生じているか、また保育者はどう対応しているのか、またその対応をする理由について質的分析を行い、その結果をもとに保育者を対象とした質問紙調査項目を作成する。 (1)分析によって抽出した概念を用いて、感情調節の発達を促すための園の対応(子ども同士の関係の支援、親子関係支援、親―保育者関係)の構造及び支援過程について、仮説を提示する。 その際、文献研究も並行して実施し、学会発表の際に研究者との意見交換を行う。 (2)未就学児の感情調節の発達を促す幼稚園・保育所・認定こども園の保育者による支援への調査項目を作成して,協力園で実施する。
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Causes of Carryover |
当初は保育者調査の協力者のデータ入力(テープ起こし)費用について、多めに見積もっていたが、インタビュー調査を実施したところ、18名で十分な成果が上がることが確認できたので、見込みより使用額が少なくなったため次年度使用額として計上する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
テキストデータを詳細に分析して、研究会で検討した後、さらに調査対象を増やす必要があれば、インタビュー調査を実施する予定である。調査項目を作成するために、文献研究や学会参加などの経費として使用する予定である。
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