2016 Fiscal Year Research-status Report
再認における環境的文脈依存機構の実証的理論構築:強度説と想起説の比較検証
Project/Area Number |
16K04422
|
Research Institution | Shizuoka Sangyo University |
Principal Investigator |
漁田 武雄 静岡産業大学, 経営学部, 教授(移行) (30116529)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
漁田 俊子 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 教授 (40161567)
久保田 貴之 静岡産業大学, 経営学部, 講師(移行) (50782877)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 環境的文脈依存記憶 / 再認 / エピソード想起説 / ICE理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境的文脈文脈依存再認のメカニズムを説明できる原理を探り,体系的な理論を構築することを本線とする。 これまでの実験結果から,環境的文脈依存再認の機構について,以下のような説明原理が浮かび上がっている。(1) グローバル環境的文脈(場所,BGM,匂いなど)は,アウトシャイン説(Isarida, Isarida, & Sakai, 2012)によって説明できる。(2) 局所的環境的文脈(単純視覚文脈,背景写真,背景色)の場合,手がかり過負荷が生じるとき,ICE理論(Murnane, Phelps, & Malmberg, 1999)で説明できる場合が多い。手がかりが過負荷にならないとき,アウトシャイン説で説明できる場合が多い。(3) ビデオ文脈の場合,手がかり負荷が小さいとき局所的文脈として,手がかり負荷が大きいときグローバル文脈として機能する可能性が高い。 (1) の点については,2016年度に論文化し,Journal of Memory and Language (Impact Factor 5.125) に投稿し,書き直し再審査になっている。実験計画やデータの不備は指摘されず,論文としてのプレゼンの問題のみが指摘されているしたがって,後2回くらいの改稿で,採択に持ち込める見通しである。(2) については,引き続き実験を重ねており,2017年度中に論文化し,国際誌に投稿する予定。(3) についても,かなり実験を重ねてきて,論文化できる見通しであった。ごく最近になって,われわれが集めてきたデータセットとは異なる結果(Shahabuddin & Smith, 2016, Journal of General Psychology,Impact Factor (IF) 1.00)が報告されていることを知った。この点をもう一度再検討し,さらに精緻化した理論化を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者が,前任校を定年退職し,新しい大学に異動した。また,代表者の指導学生(博士課程修了者)も,同じ大学に就職したため,研究分担者に加えた。実験プログラムの作成を中心に,研究に参加している。新しい大学では,まだ研究室の学生が居ないため,前任校の大学院修了者と,代表者の講義の社会人聴講生(民間企業の定年退職者)に実験実施を委任した。予想以上に,二人の連携が良く,期待を遙かに上回るデータを収集することができた。 昨年末には,グローバル環境的情報(場所,匂い,BGM)の研究結果をまとめて論文化した。内容は,(1) 再認弁別で文脈依存再認が生じる場合,Hit率で正の文脈依存効果,FA(false alarm)率で負の文脈依存効果が生じる。(2) 再認弁別で文脈依存再認が生じない場合,Hit率とFA率の両方でまったく文脈依存効果が生じない。さらに,(3) グローバル文脈依存再認の効果サイズは,DC条件のHit率(項目手がかり強度の推定値)への明確な負の回帰を示した。(5) この結果は,アウトシャイン説でよく説明できるが,現在最も有力とされているICE理論(Murnane, Phelps, & Malmberg, 1999)では説明不能である。論文はJournal of Memory and Language(IF 5.125,心理学では最高峰)に投稿した。書き直し再審査となり,現在改稿中である。審査内容からして改稿すれば採択される見通しである。当初は,この雑誌で不採択になり,その際のコメントをもとに改善してもっとIFの低い雑誌へ投稿する予定であった。それが再審査に持ち込めたのは望外であり,当初の計画以上に進展していると言える。 さらに, Quarterly Journal of Experimental Psychology(IF 2.14)に1論文,国内査読誌に2論文掲載した。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究分担者1も,平成29年度から,代表者と同じ大学に異動してくる。このため,3名の研究者が,同じ大学で緊密な連携で研究できることになる。また,平成29年度から,代表者と分担者2の研究室に学生が配属されてくる。このため,これらの学生を訓練して,実験補助者として雇用する予定。いきなりは無理なので,平成29年度前学期は,前年度の従事者との併用行い,後学期からは学生のみでの実施を行う予定。 局所的環境的文脈に関するデータは,ほぼ取り終えた。ただし,論文作成の際に,さらなるデータが必要となることは多々ある。その際には,データの追加を行う。 基本線は,(1) ビデオ文脈が手がかり負荷が低いとき局所的文脈として機能し,負荷が高く,かつ同一文脈を連続提示するとき,グローバル文脈として機能すること,(2) 局所的文脈として機能するときと,グローバル文脈として機能するときでは,文脈依存再認の発現原理が異なること(「研究の実績の概要」参照)を実証することを目的とする。Smith & Manzano (2010) は,(1) となることを提言しているが,実証的な裏づけは全くない。特に,グローバル文脈となることについての実験は全く行っていない。そこで,(1) の点を自由再生実験を通して実証する。(2) については,かなり実験を重ねてきて,論文化できる見通しであった。しかしながら,ごく最近になって,「研究実績の概要」で述べた点が判明した。この点をもう一度再検討し,さらに精緻化した理論化を行う。 論文発表としては,グローバル文脈に関する説明原理は,論文投稿し,現在改稿中である。これと並行して,局所的文脈に関する説明原理の論文化も進めている。最後に,ビデオ文脈に関する論文化を行う予定である。
|
Research Products
(6 results)