2016 Fiscal Year Research-status Report
主観的輪郭知覚に伴う神経回路ダイナミクス ― 回転運動刺激を用いた検討
Project/Area Number |
16K04425
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹本 篤史 京都大学, 霊長類研究所, 特定研究員 (20263056)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 主観的輪郭 / 脳波 / コモンマーモセット |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは、画像内に散在する情報をまとめあげ、意味のある対象を認識する。この視覚の優れた情報統合過程を端的に示す例として、主観的輪郭の知覚現象は重要な研究対象とされてきた。しかし、その神経機構の知識は未だ断片的で、神経ネットワーク全体がどのように機能して主観的輪郭の知覚体験が生じているのか不明である。本研究の目的は、回転運動する主観的図形を刺激として用い、1)ヒトの心理物理学実験、2)脳波測定、および、3)コモンマーモセットの行動実験によって、輪郭の主観的な知覚体験を生み出す神経回路のダイナミクスの全体像を明らかにすることである。本年度は(A)心理物理学実験による主観的輪郭知覚の時空間特性の解明、(B)脳波測定実験とDCMによる解析、を行う計画であった。(A)では、研究者考案の回転運動する主観的図形を生成する刺激を用い、(A-1)回転速度に依存した知覚内容の変化、(A-2)高速短時間呈示下での運動方向判断および主観図形の形状弁別の時空間パラメータ依存性、(A-3)持続的観察での主観的輪郭の消失・再出現の時空間パラメータ依存性、の測定を行い、得られた結果から最適刺激セット・被験者タスクを決定し、(B)の脳波測定を行う計画であった。(A-1)のパイロット実験の結果、知覚内容が比較的連続して変化する場合があり、知覚内容変化の測度の客観性を増すための工夫が必要なことがわかった。これと並行して、(A-2)のパイロット実験を行った結果、主観的輪郭と実輪郭の時空間特性の顕著な違いが測定でき、また、本実験で採用すべきパラメータ範囲を得ることができた。(A-3)についてはパイロット実験を行った結果、(A-1)と同じ測定上の問題点があることが明らかとなり、現在、いくつかの測度を検討中である。(A)の本実験が完了していないため、(B)脳波測定実験は行うことができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
パイロット実験から、心理物理学実験の一部に測定方法に改善が必要なことが明らかになったため、心理物理学の本実験実施に遅れが生じ、脳波実験に着手することができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
主観的な知覚内容の変化を被験者が容易にかつ曖昧さを感じない方法で測定するタスクを現在考案・検討中である。この問題が解決できれば、速やかに心理物理学実験の本実験及び脳波実験に着手する予定である。
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Causes of Carryover |
パイロット実験の結果、当初計画していた本実験で採用する被験者のタスクに改善が必要なことが明らかになり、その検討に時間を要したため、心理物理学と脳波の本実験への着手が遅れ、人件費・謝金および成果報告のための予算を使用することがなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に実施が延期された心理物理学実験と脳波測定実験の被験者と実験補助に対して支払う人件費・謝金として使用する。また、この実験結果を報告する学会等への参加のための旅費および論文発表に使用する。
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