2017 Fiscal Year Research-status Report
日本語母語者の語彙アクセス過程の高形態・高文脈依存性の検討と状況依存モデルの構築
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16K04435
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
水野 りか 中部大学, 人文学部, 教授 (00239253)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 孝雄 中部大学, 人文学部, 教授 (00267709)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日本語母語者 / 同音異義語 / 語彙判断 / 同音異義語効果 / 出現頻度 / 音韻的親近性 / 音-形フィードバック / 文脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.文脈の影響の問題 昨年までの研究で,音韻的親近性が低い場合や仲間の数が多い場合に同音異義語の語彙判断時間が長くなる同音異義語効果が大きくなることが見いだされた。しかし,日本語にはそうした同音異義語は多いが,日本語母語者がその処理に手間取ることはない。我々はこの原因が日本語の高文脈依存という特性にあるのではないかと考え,文脈の有無と音韻的親近性の高低 (中部大学研究論集),仲間の数の多寡 (認知心理学研究) を操作して語彙判断実験を実施し,文脈があれば音韻的親近性が低くても仲間の数が多くても同音異義語効果が大きくならないことを確認し,日本語の同音異義語の処理に文脈が重要な役割を果たしていることを確認した。 2.音韻から形態へのフィードバックの問題 同音異義語効果が生じるのは音韻情報が仲間の形態情報を活性化するためだとされるが,意味情報を活性化している可能性も否定できなかった。そこで我々は,聴覚呈示した同音異義語プライムの最高頻度の仲間と第1文字が同じ形音一致条件,第1文字は異なるが音は同じ音一致条件,文字も音も異なる不一致条件のターゲットの語彙判断時間を測定し,形音一致条件の語彙判断時間が最も短いことを確認し,音韻情報が形態情報を活性化する直接的な証拠を得た(認知心理学会・認知科学会発表)。 3.課題特性の問題 上述の通り,音韻的親近性は同音異義語効果に影響する。しかしこれは単語か否かの語彙判断課題に特有の現象で,意味処理を必要とする課題ではその影響は少ない可能性が考えられた。そこで我々は同じ同音異義語の刺激語での語彙判断課題と意味分類課題の反応時間を取得・比較し,語彙判断課題が音韻的親近性にsensitiveであることを確認し,課題特性を考慮した考察の必要性を示すとともに (心理学研究)。来年度の研究につながる語彙アクセス過程に関する重要な示唆を得た (心理学会発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に予定した文脈の影響に関する研究も予定通り進み,平成30年度に予定していた課題特性の研究を既に開始することができ,来年度の研究の土台となる重要な示唆も得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
概要の3の課題特性を検討する実験で,2文字の漢字表記語の意味分類に構成漢字の意味が影響する可能性が示された。日本語の2文字以上の漢字表記語は熟語でもあるため,それを構成する漢字の意味の影響が及ぶのは当然とも言える。来年度は,この影響の確証を得るとともに,漢字表記語の語彙アクセス過程で構成漢字の意味がどのように関与するかを詳しく検討し,これまでの文脈の影響等の知見と併せて,巨視的・微視的観点からの語彙アクセス過程のモデルの洗練と完成を目指す。
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Causes of Carryover |
理由: 平成30年1月9日に認知心理学研究に採択された「日本語の同音異義語処理に対する仲間の数と文脈の影響」が例年2月に発行される号に掲載予定となっていたためその審査料・掲載料・抜き刷り代が平成29年度内に請求されると予想し,その費用として約50,000円を残していたが,平成29年度内には請求が来なかったため。 使用計画: 平成30年度初頭に上記費用の請求が来ることが見込まれるため,この残金はその費用に充当する予定である。
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Research Products
(6 results)