2017 Fiscal Year Research-status Report
他者との相互作用が刺激評価に与える影響:事象関連電位による検討
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16K04436
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
加藤 公子 愛知淑徳大学, 心理学部, 准教授 (80530716)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | サイバーボール様課題 / 課題共有 / 他者刺激評価 / 抑制機能 / 加齢変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は他者との共行為が自身の行動に影響するかどうかについて事象関連電位を用いて検討することを目的としている。29年度はサイバーボール様課題を若年者と高齢者に実施し,他者との共行為による自身の行動変化に加齢変化は認められるのかについて検討した。 サイバーボール課題とはコンピュータ上の仮想の相手とボール投げをするものである。本研究ではこの課題をこれまで実施していたオッドボール課題と組み合わせ,サイバーボール様課題を設定した。サイバーボール様課題とはPC画面上に4つの四角を呈示し,その中にボールがランダムに呈示される。4つの四角のうち1つが自分に割り当てられる。参加者は自分に割り当てられた四角の中にボールが呈示された(標的刺激)らボタンを押す。課題を共に行う共行為者(別の参加者)には別の四角が割り当てられ,そこにボールが呈示された場合(非標的刺激),および残る2つの四角にボールが呈示された場合(標準刺激)は自身はボタンを押さないことが課題であった。非標的刺激は共行為者の刺激であるため,抑制反応が認められる。その抑制反応は刺激呈示後,前頭・中心部優性に認められる陽性の電位(no-go P3)に反映されるのだが,2人で課題を実施する共有条件において,高齢者は若年者より200 msほどno-go P3の生起が遅れ,さらにno-go P3は刺激呈示後700 msまで持続した。その一方,若年者で認められた他者刺激であるという刺激評価反応が,高齢者では認められなかった。これらの結果から,他者との課題共有事態では,高齢者は若年者よりもより長い時間,抑制反応を維持することで自身が誤った反応をしないように振る舞うが,他者の視点に立った刺激に対する処理はしないということが推測された。こうした研究から,他者との共行為が自身の行動に影響することは年齢を問わず認められるが,その質は年齢群間で異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度はサイバーボール様課題を用いて他者との共行為が自身の行動に与える影響について検討し,その加齢変化を確認することに主眼を置き研究を進めた。その結果,若年者および高齢者を参加者として実験を行うことができた。高齢者に対する事象関連電位の記録は若年者よりも難しいのではないかと懸念していたが,その懸念は不要であり,まばたき統制も順調にできた。したがって,予定していたデータを集めることができた。若年者,高齢者それぞれで興味深い実験結果が得られ,そこからさらなる分析が必要となる推測もできたことから,結果の解釈に時間を割き,当初予定していたよりも発展した研究内容になったと考える。しかしながら,これらデータを論文にまとめる作業を29年度中に終えることができず,それは現在進行中である。これらの経緯を総合すると,現在までのところ進捗状況はおおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は29年度の研究をさらに発展させることを中心に進める。29年度同様,実験ではサイバーボール様課題を使い,他者との相互作用という視点から研究を発展させる。具体的には,自身と他者とのキャッチボールが成立する条件を設定する。つまり,自身に割り当てられた四角にボールが呈示され,それに対してボタン押し反応をした後,共行為者に割り当てられた四角にボールが呈示され,共行為者はそれに対してボタンを押す。このように,他者との相互作用を経験することで他者刺激に対する評価はより強くなるのかについて検討する。これまでの研究成果を踏まえると,他者刺激に対する評価だけでなく,他者刺激に対する抑制,他者刺激に対する誤反応準備等についても検討していく必要があると考える。今後はこれらの点に着目し研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
実験参加者および実験協力者への謝金が予定よりも少なかったこと,学会参加が予定よりも少なかったこと,英文校閲費用および論文投稿料が予定より少なかったことが理由として挙げられる。 今年度は実験協力者および実験参加者への謝金が増えると考える。論文作成にあたり英文校閲の費用,および論文投稿料がより多く必要になる。学会への参加を複数予定しており,旅費が必要となる。
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Research Products
(1 results)