2016 Fiscal Year Research-status Report
三次元空間における注意配分特性の検討:前方空間と後方空間での類似性と相違性
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16K04438
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
木村 貴彦 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 准教授 (80379221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 一光 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60260642)
紀ノ定 保礼 静岡理工科大学, 情報学部, 講師 (00733073)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 注意 / 実空間 / 鏡空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
鏡の中では全ての像が実像に対して反転するにも関わらず,我々は必要な情報を獲得できるにも関わらず,鏡の空間において視覚システムがどのように機能しているのかについては不明である.今年度の主眼は,本研究が扱う空間的注意の問題を明らかにするために,基礎的な事項として,鏡を介した後方空間における物体認識と前方を向いたままで行う物体認識にどのような違いがあるのかという点を調べることであった.本研究では実空間と鏡空間における物体認識における相違性と類似性について検討した. 20人が実験に参加した.黒い立方体を参照点として観察者から177cmの机の上に配置した.1,3,6個の色がつけられた立方体が参照点の周囲にランダムに配置された.実験のために独自に液晶シャッター装置を作成した.従来の多くがゴーグル式を採用しているのに対して板状のものを自立するようにし,より広い観察範囲を確保できるようにした.同時に,任意の位置に設置可能な鏡を用意した.液晶シャッター装置は観察時間を制御するために用いられた.あご載せ台を用いた観察者の課題は,1/10の縮尺で参照点だけが描かれた紙に物体の配置を再生することであった.2つの観察条件,つまり実像と鏡像があった.実像条件では刺激は観察者の前面に提示された.他方,鏡像条件では刺激は鏡を介して提示された.刺激の物理的な位置関係はそれぞれ同一に調整された.無回答率については,どちらの観察条件でも6個との時に増大し,さらにはこの傾向は鏡像条件で顕著であった.物体の再生位置について,実際の位置よりも近くか遠くであったかで分析をした.結果,距離知覚は実像条件に対して,鏡像条件でより過大評価されていた.すなわち,鏡を介した後方空間と前方の実空間での物体認識に違いが示された.これらの知見より,鏡空間は何らかの特別な特徴,例えば異なる空間的参照枠が用いられている可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度であり,当初の目的としていた実験を行うための機材の整備を行うことができたことと,基礎的知見を得るための実験を実施できたことからおおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
前方の実空間と鏡を介した後方空間では物体の位置や観察者からの距離に違いがあることが示された.すなわち,物理的に同程度の空間位置にあったとしても,双方の空間で物体認識に違いが見られる可能性が示唆されたと言える. 得られた知見を受けて,今後は空間的注意がどのように配分されており,それぞれの空間でどのような類似性と相違性が見られるのかについて検討を進めていくこととする.
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Causes of Carryover |
既存の機材などを利用して研究を実施することができたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度に得られた研究を国内外で発表するとともに,実験・研究の実施を効率的かつ効果的に行い,着実な成果を得るために経費を執行していくこととする.
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