2017 Fiscal Year Research-status Report
楽観主義が符号化処理に与える影響―虚偽記憶と自己選択効果による検討
Project/Area Number |
16K04440
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Research Institution | University of East Asia |
Principal Investigator |
鍋田 智広 東亜大学, 人間科学部, 准教授 (70582948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 史典 山口大学, 教育学部, 准教授 (90549510)
中井 靖 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (80462050)
具志堅 伸隆 東亜大学, 人間科学部, 教授 (10449910)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 楽観主義 / 楽観性 / 虚偽記憶 / 符号化 / 自己選択効果 / 学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では, Thomas & Sommers (2006) における文章を付加することによって示差性を高める手法を用いて虚偽記憶への効果を調べた。文章を付加して学習刺激を作成し,虚偽記憶に与える影響を検討した。その成果を第73回中国四国心理学会で発表した。ここでは,実験参加者75名を対象に特性的楽観性を測定し,再認実験を行った。再認成績について,文章を追加して学習単語を符号化する条件 (例:今年の夏は例年になく「あつい」)と,学習単語のみを符号化する条件 (例:「あつい」)とを比較した。実験の結果,文章を付加することによって文章の追加による再認成績低下が認められ,虚再認への変化は認められなかった。加えて,虚再認成績と再認成績の比について追加して分析した結果,文章の追加による虚再認の増加が認められた。この結果は,文章の付加は単語の示差性を高めるというよりは,関連性を高めたのかもしれない。本研究で使用した刺激に付加された文章は,単語間で類似しており,それぞれの単語の関連性がより処理されやすくなった可能性がある。学習の単語間の違いを明確にするような特徴を追加するなどして示差性を高めた実験を検討する方向で進める。また,自己選択効果についても同様に実験を進めている。その結果,報酬などの動機づけによって自己選択による効果は記憶成績を低下させることが明らかになった。これらの成果を2018年度の認知心理学会等で発表する。本研究課題に関連して,刺激の示差性を高める特性について検討を進めている。知覚的に不明瞭な刺激は符号化処理を促進するとされている。知覚的不明瞭さが示差性を高めるかどうかについて実験的検討を重ね,成果を論文で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在は楽観主義の個人が実行する符号化方略を検討するため,示差性を高める刺激について検討を進め,ここまでの研究成果の報告,これまでの実験結果の再分析,新たな実験の計画を進めている。ここまでの研究成果としては,文章を追加する操作についての検討を行った実験を幾つか実施しており,そのうちのひとつを昨年度の第73回中国四国心理学会で発表した(鍋田 (2017). 特性的楽観主義が符号化処理に与える影響.)。また,示差性を高める刺激特性として知覚的不明瞭さについて検討した複数の実験を行った。その結果,知覚的不明瞭さは,参加者の学習の認知には影響を与えるものの,学習成果を高める効果までは示さないことを明らかにした。これらの結果については,第81回日本心理学会で発表した(鍋田 (2017). 文字の読みづらさは記憶成績を高めるのか?-文字の非流暢性が成績の予測に与える影響の検討-)。また,この成果をまとめて論文として発表した(鍋田 (2017). 非流暢性効果の実験室実験における再現性の検討-学習材料の非流暢性が符号化方略に及ぼす影響-)。その他に,自己選択効果を利用した効果について検討した実験結果も得られている。これは楽観主義と関わりがあるとされる報酬を用いた実験である。この実験からは,報酬が自己選択による虚偽記憶を増加させることが明らかになった。この結果は2018年度中に学会発表等をして成果を発表する。これらの実験結果を踏まえ,さらに昨年度の実験結果を新たに再分析するなどして,現在までに2018年度に実施するための実験計画を立案し準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方向性としては研究結果の蓄積を更に進める。すなわち,1) 示差性について文章を付加する実験の追加,2) 自己選択効果についての実験の追加,3) 刺激の示差性を高めるための操作についての実験の実施,そして4) 楽観主義を促進する操作の検討についての予備的実験を進め,研究結果を蓄積する。1)については,文章について付加する内容面の検討,知覚的特徴の検討を進めている。また,既に明らかになっている特性的楽観主義の注意特性に合わせた呈示手法を用いる形で具体的に検討を進める。2) の自己選択効果については,昨年度までに特性的楽観主義と関連する実験操作として報酬を取り上げて検討しており,さらにこの方向性を強める方向で実験計画を作成し研究を進める。3) については,既に多くの研究で示差性を高める刺激の特徴は明らかになっている。これらの先行研究を踏まえて特性的楽観主義の注意や思考の傾向を考えて検討を進める。4) については,BPS法などを用いた検討および,実験的に実施する手法や運用する方法について検討する研究を計画しており,これらの案を検証するために予備的検討を進める。また,既に得られている研究結果を学会発表や論文という形で公表する。特に,実験結果を発表するだけでなく,既に昨年度得られた実験については,発表して議論をする中で得られたアイディアをもとに追加の再分析なども行いながら研究を進める。例えば,第73回中国四国心理学会で発表した成果については,正再認との比をとることで,文章の付加によって虚偽記憶が増加したといったことが明らかになった。この分析結果について新たに発表を進めていく。
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Causes of Carryover |
2017年度は実験を研究代表者の研究機関を中心に実施したため,打ち合わせに出張ではなく主に電子メールやウェブ通信システムを使用していた。2018年度は分担者の研究機関等での実験の実施を視野に入れて研究を進める。そのため,代表者から分担者の研究機関への出張等で費用を使用する。
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Research Products
(8 results)