2016 Fiscal Year Research-status Report
小児医療職観点を加味した養護教育専攻課程における医療事故予防教育法の新規開発
Project/Area Number |
16K04448
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
岡田 忠雄 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30344469)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 玲子 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (10322869)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 養護教育 / 医療事故 / 予防教育 / 小児医療職 / 医学的根拠 / 学校 / 医療訴訟 / 法的責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】平成28年度目的は、1)学校における主要な小児救急疾患選択と2)その医療訴訟例を医療職観点から集計し、学校救急の現状を把握(複数年必要)である。 【対象・方法】日本スポーツ振興センター学校災害共済給付制度報告集計等から学校死亡・障害例を集計、加えて学校の小児医療訴訟例の収集を行った。 【結果・考察】1.小児救急疾患死亡例:健康被害事例(障害・死亡)は平成24年459例、平成25年443例、障害・死亡例は平成24年48例・411例、平成25年63例・380例であった。死因別(平成25)では、突然死、頭部外傷、溺死、窒息死(溺死以外)、内臓損傷、熱中症、全身打撲、その他、で23例、8例、3例、10例、9例、1例、7例、2例と突然死が一番多かった(36.5%)。2.障害集計内訳(平成25年度):歯牙障害、視力・眼球運動障害、手指切断・機能障害、上肢切断・機能障害、足指切断・機能障害、下肢切断・機能障害、精神・神経障害、胸腹部臓器障害、外貌・露出部分の醜状障害、聴力障害、せき柱障害、そしゃく機能障害、で72例、95例、25例、102例、2例、7例、44例、17例、89例、9例、8例、0例と視力・眼球障害が一番多かった(25.0%)。3.学校の医療訴訟例:平成28年度は学校医療事故訴訟判例を20件渉猟し、教員・学校設置者の法的責任・リスク等を調べ、教員責任は、①民事責任(損害賠償責任)、②代理監督者責任、③刑事責任(死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収)、学校設置者責任は、①使用者責任、②代理監督者責任、③安全配慮義務であった。 【結語】学校事故では児童・生徒が種々疾患で死亡するリスクをもつことがわかり、訴訟になった場合、民事・刑事罰が課せられることもありえた。 以上の研究成果をpreliminary studyとして、平成29年度に学会発表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大きく研究計画を変更することなく、おおむね当初の研究予定の通り進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、学校で発生する小児医療事故の訴訟判例を、小児医療職(医師・看護師)の専門的立場・観点から、養護教諭の法的責任、原因究明、及び適切な事故後対応法を検討し、養護教諭が抱える医療リスクを明確にし、そのリスク軽減を図る方策を検討する。加えて、養護教育専攻課程の学生にとってニーズが高い、医療事故予防教育法(アルゴリズム教育)の新規開発を行うことを最終目的とする。今後は当初の研究予定に従って、1.学校における小児医学救急疾患の医療訴訟例の更なる渉猟を進めて医療職観点から集計し、本邦における学校救急の現状を把握(医療訴訟の判例収集は複数年に及ぶ)、2.医療訴訟に至った、学校における小児医学疾患に対する重症度・緊急度分類法とその対処法のEvidence Based Medicine(EBM)の構築(EBM収集は一部、複数年に及ぶ)、3.医療事故予防教育法を趣旨としたアルゴリズム教育の検討、4.医療事故予防を重視した小児医学アルゴリズム教育法の作成、5.小児医学、臨床医学、養護演習等の講義・実習で資料として使用し、その有用性を検討する予定である。 最終的には北海道教育大学養護教育専攻の学生に対して、小児医療職観点から作成したアルゴリズムを使用し医療リスク軽減と対応の禁忌肢も加味し、緊急度・重症度を判定する学習は小児医学の受講で「役にたったか」等を質問調査し「役にたった」「役にたたなかった」等の回答を求め、それぞれの理由も自由記載してもらう予定である。その結果をまとめ、作成したアルゴリズムに反映させることで、学校における小児医学を医療事故予防と緊急度・重症度判断を重視して、学生視点で学生ニーズに合ったわかりやく学ぶアルゴリズム教育法を作成する予定である。
|
Causes of Carryover |
予定していた設備備品費の中でPC機器が当初の予定より減額して購入できたこと、医療訴訟判例の渉猟数が増加する予定の次年度以降に判例収集費用が予定されること、また、各種PCソフトやPC周辺機器等の消耗品も判例数増加に伴って使用することに変更した等の理由によって未使用額が生じた。一方、本研究情報の収集や研究課題点設定・解決の糧を収集するため、また、小児救急に関する最新情報を得るために学会旅費が予定より増えた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額や今後の使用計画としては、当初予定されたものに加えてPC機器・周辺機器等の設備備品や消耗品購入に充てることにしたい。本年度研究の新たな知見として、学校医療事故では児童・生徒が種々疾患で死亡するリスクをもつことがわかり、訴訟になった場合、民事・刑事罰が課せられることもありえることが判明し、研究成果発表や情報収集のため、学会発表・参加が増えることも予想される。次年度以降、旅費や学会参加費、研究図書の購入を増やすこと、また判例収集の方法を追加する可能性もあり、これらの諸経費が増額することが見込まれる。
|