2016 Fiscal Year Research-status Report
米国における教員資格認定制度の多様化が学校区間「格差」に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
16K04453
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
小野瀬 善行 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (50457735)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教育政策 / 新自由主義 / 多様な教員任用 / 教育の機会均等 / 格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である平成28年度は、研究計画どおり、教員制度への「市場」創出を目指した政策動向を分析する理論的枠組みの構築を図るため、「新自由主義」や「機会均等」をキーワードとする国内外の関連社会科学の先行研究にあたった。 また、実際に教員資格認定の多様化が各学校区間の「格差」にもたらした影響について調査を行うべく、渡米調査を実施した。具体的にはニューヨーク州ニューヨーク市(NYC)を事例として、各関係機関への聞き取り調査を行った。NYCは大都市学校区を抱え、さらに教員不足が常態化している。さらに伝統的な大学における教員養成プログラムに加え、様々な教員任用政策、具体的には教員資格認定のためのオルタナティブ・ルート(alternative route to teacher certification、以下ARTC)が導入されている実態がある。その導入実態の全貌をつかむための調査を実行した。また、NYC公立図書館などにおいて資料収集を行った。 あわせてARTCを提供しているNPO法人などへの聞き取り調査を申請したが、先方の都合により実現ができなかった。また、NYCの事例を比較検討するために同州内における他の学校区(school district)の訪問について事前に調整が難航し、実施することができなかった。この点を反省し、これらの補足的な調査について研究期間内に再度実施するように調整を行うこととした。 また、研究成果をまとめるために必要不可欠である学会報告や研究論文について、今年度は、一昨年度の異動による職場環境が変わったことにより本務の多忙化の影響の余波及び自身の見通しが十分でなかったことから、十分に実施することができなかった。この点についても反省し、次年度(平成29年度)以降に積極的に行っていくこととしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、一昨年度後半の異動により教育・研究環境が変わったことの影響が、昨年度まで継続してしまった。この点について自分の見通しが十分でなかったことを反省するものである。また、平成25年度から平成27年度までの計画で進めていた、報告者が研究代表者である、若手研究(B)「米国教員養成政策の形成過程-オルタナティブ・ルート政策の「選択」に着目して-」(課題番号25780481)についても、異動の関係で平成28年度まで延長申請したこともあり、昨年度は双方の調査や研究上の重複があり、想像以上の負担が生じ、思ったような進捗が得られなかったことが反省点としてあげられる。 今年度は、当初の予定通り、1980年代以降のアメリカ合衆国(以下米国)における教員資格認定制度の多様化が、学校区間の「格差」にどのような影響を及ぼしているのかについて実証的に明らかにするという目的の下、米国の現状を明らかにするのみならず、日本の教員養成制度改革への示唆を得るように研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、昨年度の研究の遅れを少しでも取り戻すべく、計画的に研究を進めてきたい。まず初年度に引き続き、教員制度への「市場」創出を目指した政策動向を分析するための理論的枠組みの構築を図る。教育学研究に限らず、「新自由主義」、「格差」、「機会均等」をキーワードとする国内外の関連社会科学研究を広く渉猟する。これらの先行研究を踏まえ、本研究における研究枠組みを構築し、上記のような政策の特質と課題についてまとめたものを研究論文としてまとめるようにしたい。 次に、初年度に引き続き、渡米調査を実施する。具体的にはカリフォルニア州における調査を実施する。同州は2004年、連邦教育省が定めた行政命令に対応する形で規則を改定し、中等教育学校(middle school及びsecondary school)においては、州の認定するプログラム(ARTCプログラムのひとつ)に参加していれば、初等中等教育法改正法(No Child Left Behind Act of 2001)に違反しないという政策を採用している。これに対し、当該規則は、経済的に恵まれない児童・生徒が多く在籍する学校区において適切な資格認定を受けていない教員が多く存在するという現状を固定化し、学校区間の格差をますます広げるものであるという批判がなされた経緯がある。以上の事例は本研究にとっても注目すべき事例であり、とりわけロサンゼルスや周辺学校区との取り組みについて調査を行うこととしたい。 また、初年度と同様に、研究代表者が所属する関連学会大会において、本研究の経過とその時点での成果を報告し、研究推進を図りたい。
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