2017 Fiscal Year Research-status Report
米国における教員資格認定制度の多様化が学校区間「格差」に及ぼす影響に関する研究
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16K04453
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
小野瀬 善行 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (50457735)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教育の機会均等 / 教育における平等 / 教員資格認定 / alternative route |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目である平成29年度は、教員制度への「市場」創出を目指した政策動向を分析する理論的枠組みの構築を図るため「新自由主義」や「機会均等」をキーワードとする国内外の関連社会科学の先行研究に引きつづき学ぶことになった。 さらに実際の教員資格認定の多様化が各学校区間のいかなる「格差」を生み出したのかについて調査を行うべく渡米調査を実施した。2年目である本年度は、カリフォルニア州サンフランシスコ市およびサクラメント市において調査を行った。カリフォルニア州においては教員不足解消のために導入されている教員資格認定のためのオルタナティブ・ルート(alternative route to teacher certification、以下ARTC)を巡り、教育格差を再生産するものとして裁判が行われており、その判決に関する資料収集を行うことができた。具体的な学校区(school district)訪問については事前に調整が難航し、実現に到らなかった。2年続けて訪問がかなわなかったことを猛省し、具体的な調査について研究期間内に必ず行うように調整したい。 また、研究成果をまとめるために必要不可欠である学会報告や著作物については、共同発表及び共著という形で研究成果の一部をまとめることができた。学会報告(日本教育制度学会第25回大会:東北大学)においては、初等中等教育法改正法(Every Students Succeed Act)における様々なARTC導入の現状と格差への課題提起について本研究の知見を活かして報告することができた。また『教育の法と制度』(ミネルヴァ書房・2018年2月発刊)の中で本研究の知見を生かし教職員をめぐる制度と課題についてまとめることができた。これらを踏まえ、最終年度に向けて更に研究論文をまとめていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異動より2年が経過し、教育・研究環境の変化に順応することができたこともあり、おおよそ計画の通りに研究を進めることができたと判断する。昨年度の反省として、1980年代以降のアメリカ合衆国(以下米国)における教員資格認定制度の多様化が、学校区間の「格差」にどのような影響を及ぼしているのかについて実証的に明らかにするという目的の下、米国の現状を明らかにするのみならず、日本の教員養成制度改革への示唆を得るように研究を進めていきたいことを挙げたが、日本への示唆について共著『教育の法と制度』(第7章「教職員」・ミネルヴァ書房・2018年)や拙稿「従来の地域連携の取り組みを活かした学校運営協議会導入と学校運営」(宇都宮大学教育学部実践紀要第4号、pp.153-158)としてまとめることができた。引きつづき米国の動向を踏まえるとともに、日本への示唆を得ることを念頭に研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、最終年度であることから研究をより推進・発展させることに注力したい。まず昨年度に引きつづき、教員制度への「市場」創出を目指した政策動向を分析するための理論的枠組みの構築を図る。教育学研究に限らず、「新自由主義」、「格差」、「機会均等」をキーワードとする国内外の関連社会科学研究を広く渉猟する。これらの先行研究を踏まえ、本研究における研究枠組みを構築し、上記のような政策の特質と課題についてまとめたものを研究論文としてまとめるようにしたい。 次に、初年度に引き続き、渡米調査を実施する。具体的にはテキサス州ヒューストン独立学校区における調査を実施する。同学校区は全米で有数の規模をもち、さらに全米に先駆けてARTCを導入した学校区である。長い歴史を有するプログラムが「格差」といった問題に対してどのようなアプローチを採ってきたのか(あるいは採ってこなかったのか)を明らかにすることで本研究のまとめるためにも注目すべき事例である。同学校区教育当局や現地の学校について訪問調査を行うこととしたい。また、昨年度と同様に、研究代表者が所属する関連学会大会において本研究の成果を報告し、年度末に向けて研究成果として論文をとりまとめるようにしたい。
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Research Products
(4 results)