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2017 Fiscal Year Research-status Report

多様性を内包した民主主義公共圏における人間形成論の構築に関する研究

Research Project

Project/Area Number 16K04456
Research InstitutionYokohama National University

Principal Investigator

藤井 佳世  横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (50454153)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2019-03-31
Keywords教育学 / ホネット / ハーバーマス / 人間形成 / 民主主義 / 公共圏
Outline of Annual Research Achievements

初期ハーバーマスの思想における民主化を目指した教育と人間形成の特徴を次の三つの視点から明らかにした。第一に、教育と政治の視点からである。1960年代の教育改革と人間形成論に関して、ハーバーマスは高等教育改革について積極的なコメントを出す中で、学生や助手を含めた大学の政治的な意思形成のあり方に注目している。このことは、当時の高等教育が社会と無関係に進められていることに対する批判であり、ハーバーマスは高等教育における自治を重視しながら、社会変化の中でそれに応じた形で民主化へ向かう方向を実践的に企図していた。第二に、第一の点を青年の成長に関する研究と比べることによって、次のことが明らかになった。同時期のハーバーマスは、青年期の心理学的研究から自分のことを適切に説明する能力に着目し、その能力が道徳意識へつながるというコミュニケーション理論を提案しており、自己形成と政治が言語能力において結びついていることが明らかになった。第三に、自治と関連した生活世界概念の捉え直しの必要性である。近年、批判理論の研究者から、システムと生活世界という二元的世界理解からは、今日的な生活形式の変化に伴う正当化領域の問題変化を適切かつ十分に捉えることができないのではないか、という問題が提起されている。このことは、私的な問題に見える内容でも政治的なコミュニケーションとして正当性をめぐる問題として扱う可能性があることを示唆しており、政治的コミュニケ―ションの拡大方向として捉えることができる。民主主義公共圏における新たなコミュニケーションのありかたは、生活形式の変化と批判を組み込んだ政治的コミュニケーションにつながる方向で考えられる必要があり、正当性と主体化を結びつける新たな視点が必要である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

ハーバーマスの教育思想と教育改革を民主主義の観点から捉えることによって、自治において想定されているコミュニケーションのあり方を獲得することができた。また、ドイツの教育学者との対話から、民主主義と公共圏の違い、教育改革の失敗とコミュニケーションのあり方に内在する問題についても明らかになり、次の課題が明確になり、おおむね順調に進んでいる。
しかし、国内外の研究者と対話を進めるなかで、ハーバーマスのコミュニケーション論的転回を教育学的に再解釈する必要性やハーバーマスの書物に関わる問題がアビトゥアに出題されたなど非常に具体的な関わりから再解釈する必要性が明らかになり、可能な限り広い歴史状況の視点から資料解読を進めることで、民主主義公共圏の新しいあり方へ向かう道と実践との重なりを再解釈する必要があることが明らかになった。

Strategy for Future Research Activity

平成30年度は、一年目、二年目の成果をもとに、承認とコミュニケーションが民主主義公共圏における人間形成にどのようにかかわるかを明らかにする。そのために、常時、新たに必要になるホネットとハーバーマスに関連する著書や論文を収集し解読を進めるだけではなく、ドイツ教育哲学における民主主義公共圏と人間形成論に関する資料を収集し解読を進め、新たな視点としてプラグマティズム思想との接続や思想交流も射程に収めた理論化を進める。また、学校における承認とコミュニケーションのありかたについても考慮にいれ、これまでに解読した資料を読み直すことも必要となる。最終年度となるため、民主主義公共圏を構成する承認とコミュニケ―ションのありかたを提示し、多様性を内包した民主主義公共圏における人間形成論を探究する。

Causes of Carryover

(理由)古書(絶版等)や洋書の購入が当該年度に十分実施できなかったことによる。
(使用計画)到着時期が不確定な古書(絶版等)や洋書の購入は、可能なかぎり早急に計画的かつ積極的に実施する。

  • Research Products

    (3 results)

All 2017

All Journal Article (2 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Journal Article] 個人化時代における教育と政治―市民性の涵養という結節点2017

    • Author(s)
      藤井佳世
    • Journal Title

      教育哲学研究

      Volume: 115 Pages: 8-14

  • [Journal Article] Education and Politics in the Individualized Society:Connecting by the Cultivation of Citizenship2017

    • Author(s)
      Kayo Fujii
    • Journal Title

      English E-Journal of the Philosophy of Education

      Volume: 2 Pages: 44-51

    • Open Access
  • [Presentation] Another Learning Style in the Global Era:Japanese Self, Recognition and "Manabi"2017

    • Author(s)
      Kayo Fujii・Yasunori Kashiwagi・Masamichi Ueno
    • Organizer
      Philosophy of Education Society of Australasia
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2018-12-17  

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