2018 Fiscal Year Research-status Report
社会的探究としての政治教育理論の構築─プラグマティズムの思想史的解釈を通して─
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16K04460
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
生澤 繁樹 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (70460623)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プラグマティズム / デモクラシー / 政治教育 / ポスト基礎づけ主義 / 多文化主義 / 多文化教育 / 革新主義 / ジョン・デューイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,19世紀および20世紀転換期から現代へと至るプラグマティズムの思想史的解釈を通して,社会的探究としての政治教育理論の展開可能性と課題について解明することを目的とする。この目的を果たすために,本研究ではとりわけ「科学的探究」や「思考の方法」といったプラグマティズムの哲学・倫理・論理学上の示唆に基づく「社会的探究」という視角から,現代の政治教育のあり方を問いなおし,その理論的基盤の解明と理論構築を図る。現代の政治教育が直面する問題点や困難の諸相を現代的かつ実践的な観点および思想史的から再理解・再評価することによって,本研究は科学・道徳・政治の理解をともに結びなおし育むような新しい政治教育と実践のための理論的視座を明らかにする。 研究計画三年目の平成30年度は,プラグマティズムの思想史的・歴史的評価(平成28年度)と「社会的探究」からみた現代の政治教育の展開可能性と課題の解明(平成29年度)の諸成果に基づき,政治へと参加し思考する市民を育成する政治教育の理論的基盤の解明と理論構築を試みた。第一に,プラグマティズムの歴史的評価とともに現代的な意義の解明へと接続するための諸条件を理論的に探っていった。具体的には,①アメリカ革新主義の再評価とデューイ教育理論の再定位,②パース,ジェイムズ,デューイのプラグマティズムから現代プラグマティズムへと至る展開の再解釈とその現代的意義の再吟味を試みた。第二に,政治と教育の交差という課題から現代の教育課題の捉えなおしを行なった。具体的には,①20世紀以降の多文化主義と多文化教育の展開の再理解,②探究的な学びの意義を踏まえたカリキュラムと授業実践の諸相からみたプラグマティズムの脱文脈化と再文脈化,また③こうした諸課題の捉え直しが日本の教育課題のみならず東アジア文化圏の問題構制とどのようなかたちで接点をもちうるのかを探っていった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定した研究計画からみれば着実な諸成果を収めていると考える。第一に,学会等における研究報告,論文・著書等による成果の公表を通して,本研究の課題解明が進展した。第二にそれだけでなく関連して検討され解明されるべき新たな課題も確認できた。そして第三に,研究を遂行するなかで,より広い射程から本研究の課題解明の意義を位置づけることも可能となった。ただし,現在までの進捗状況は多くの部分において順調に進展していると評価できるものの,プラグマティズムの現代的意義の解明および政治教育理論の構築という側面から捉えるならば,それらの諸成果を総合する新しい観点がいまだ明確にはなっていないところもある。本研究課題の意義を最終的に評価するための視点をいっそう明瞭にするためには,たとえばポスト基礎付け主義との思想的関連性や,政治教育,道徳教育,社会科教育との教育理論的関連性の解明など,さらに検討・吟味をする課題が残されていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の意義をプラグマティズムの現代的意義と政治教育理論の構築というより総合的な観点から最終的に結論づけるための作業と評価を行っていく。本研究の計画を遂行していくにあたり,各種の関連学会や研究会での報告,学外の研究者・研究機関との学術的交流の機会をいっそう積極的に増やしていく。また本研究成果を論文・著書等に刊行によって本研究課題の意義をいっそう幅広く検証に開いていくつもりである。必要に応じて学内外のWebページ等を利用しながら本研究の情報と成果をさらに発信していくことも検討する。
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Causes of Carryover |
本研究課題解明の延長にともない,使用計画を見直し,次年度使用額が生じることとなった。次年度への繰り越し使用額については,研究成果の公表および諸成果のまとめ作業にかかる費用に充当し,経費を計画的に使用する。
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Research Products
(10 results)