2016 Fiscal Year Research-status Report
「無」の思想に基づくケア理論の構築とその臨床教育学的位置づけ
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16K04461
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
稲垣 応顕 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (90306407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 達也 武蔵野大学, 看護学部, 教授 (00630708)
Sevilla Anton 九州大学, 基幹教育院, 講師 (50754438)
西平 直 京都大学, 教育学研究科, 教授 (90228205)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教育学 / 臨床教育学 / 無の思想 / ケア / 宗教哲学 / 教育カウンセリング / 臨床心理学 / チャプレン |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)共同研究会の開催:京都大学を会場に研究会を2回、上越教育大学を会場にシンポジウムを1回行った。 第1回研究会(2016.6.18,19):研究協力者の顔合わせと今後の計画案、研究に対する「照合事項」の確認を行い、各自の研究経過を報告しあった。第2回研究会(2016.12.3,4):①稲垣から非行を頻発させる生徒へのカウンセリングを通したケアリングの実践事例とそれに基づく教育カウンセラーにとっての『無心』についての研究発表、②坂井から宗教哲学とケアリングの関連に関する研究発表が行われ、それぞれに訂通する『無心』の概念についてのディカスカッションが行われた。 (2)シンポジウム『スクールカウンセラーを考える』の開催(2016.12.17):上越教育大学を会場に、稲垣と坂井の企画によるシンポジウムを行った。水上和夫氏(元小学校校長、上級教育カウンセラー,富山県教育カウンセラー協会会長)、戸田弘子(日本人間性心理学会幹事,臨床心理士,兵庫県スクールカウンセラー)、横澤富士子(糸魚川市 子どもの主任教育相談員,上級教育カウンセラー,新潟県スクールカウンセラー)の三名をシンポジストに招き、稲垣と坂井がコーディネーターを勤めた。現職教員・スクールカウンセラー・医療また福祉系の職員及び臨床心理士・大学院生など、140名の参加者があった。背景理論や方法が異なっても、スクールカウンセラーが子供や保護者に対する態度に共通項を見出し、無心とケアの視点からディスカッションを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度として、予定した事業を滞りなく行った。すなわち、2度の研究会では、①「無心」と「ケア」について、本研究の参加者のそれぞれの領域における捉え方や概念を提出しあい、その共通項と違いを整理することが出来た。結果、人間にとっての「生死」の意味付け、日常会話で話される「無心」の語用論的概念、死を語ることで命を生きる(育てる)という逆説的論理による無心の概念など、「無心」の用語における多様な意味付けを行うことが出来た。また、 一方、シンポジウムでは、①リストカットなど死へ向かう行為を繰り返しながら、自身の流した血を見ること、痛みを覚えることで生を実感しようとする生徒の実態や、生死を人工的に形作ってしまう薬害を始めとする医療・福祉の問題点、それらに損得勘定や利害関係なしで一生懸命取り組む際に起こる『無心のケア』、非行を繰り返す生徒の中に、懸命に命を生きようとする生徒の姿、および彼らと対峙する教師やカウンセラーにとっての無心など、様々な無心の概念をあぶりだすことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も2回の研究会と1回のシンポジウムを計画している。 研究会においては、チャプレンである小西の無事例報告、また教育哲学を理論背景に持つアントンによる理論研究などを予定している。また、西平による教育と哲学のはざまにある無心の考え方を接着剤とした『無心』と『ケア』に通底する何かを追求したいと考えている。 また、昨年12月に実施した『スクールカウンセラーを考える』のシンポジウムをベースとした書籍の刊行を予定している。
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Causes of Carryover |
東京、京都、新潟での研究会俣シンポジウムを予定しており、そのための旅費が必要である。 また、理論研究を進めるための書籍購入が必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
6月3,4日に小西が勤務する武蔵野大学を会場とした研究会を予定している。また、9月、10月に京都大学での研究会と上越教育大でのシンポジウムを予定している。
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