2016 Fiscal Year Research-status Report
過疎地域小規模校における教師の授業力形成及び授業研究組織開発に関する研究
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16K04464
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
石川 英志 岐阜大学, 教育学研究科, 教授 (20168199)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小規模校 / 過疎地域 / 校内授業研究 / 若手教員 / 同教科コミュニティ / 異教科コミュニティ / 連携協働 |
Outline of Annual Research Achievements |
教科部会の不成立、若手教員の比率上昇等が進行する小規模中学校における若手教員の授業力形成を目指す授業研究組織開発に関して、T中学校をフィールドとした同校及び岐阜県及びN市教育委員会との連携協働プロジェクト(以下、「プロジェクト」と呼称)を企画立案・実施・分析考察した。 プロジェクトの企画立案に先立って、小規模校の状況に対応できる授業研究組織の基本デザイン(校内の他教科教員と協働する教科横断的な学びの視点群の設定と、外部リソ-ス〈大学、教育委員会、近隣の小・中学校等〉との連携を活用した教科専門的な学びの組み合わせ)を考案した。その内容に関しては、岐阜県教育委員会東濃教育事務所の協力を得て、学会共同発表を行った。 この基本デザインをもとに、教職大学院実務家教員を研究協力者として、教職大学院現職教員院生や教育委員会指導主事の協力も得て、プロジェクトを実施した。その実施を通して、現職教員院生及び指導主事の参画による、教科部会成立のもとでの教科専門的な学び、校内のベテラン中堅教員と若手教員との対話や協働の場の設定等、学校活性化の中核を占める小規模校若手教員の授業力育成をめぐる汎用性のあるモデルの構築に至った。こうしたプロジェクトの実施及び分析を踏まえて、過疎地域小規模中学校教員の授業力向上を目指した校内の授業研究組織編成、外部リソ-スの活用に関して、日本教職大学院研究大会において教職大学院実務家教員、T中学校教員と共同発表した。また、岐阜大学地域協学センター報告書にも掲載した。 当該年度末の段階では、岐阜県総合教育センターとの協議に基づいて、岐阜県内の全ての小規模中学校(12学級未満の計113校)を対象に、各教科ごとの教科部会の成立状況、若手教員とベテラン中堅教員のメンタリング関係、免外教科担当状況等に関する書面調査(アンケート調査)を実施し、現在、集計に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、特定の小規模中学校におけるアクションリサーチの内容として、担当教科の異なる教員で編成される異教科コミュニティによる協働授業研究を展開し、その学びの分析考察による可能性や課題を明らかにすることを予定していたが、これと並行して、教職大学院実務家教員、岐阜県及び市教育委員会の参画によって、大学や教育委員会のスタッフを外部リソースとして組み込んで活用し、同教科コミュニティの成立による授業研究の展開に踏み込むことができた。これは当該中学校のニーズへの対応でもある。よって、異教科コミュニティでの学びと同教科コミュニティでの学びをいかに組み合せていくかという教師の学びのデザインに関する課題が生起したと考えられる。これは、次期学習指導要領のもとでの生徒の教科横断的な資質・能力の育成に向けて教員の学びをどう展開していくかという課題につながるものである。 また、書面調査(アンケート調査)対象に関しては、当初、岐阜県東濃地区の小規模中学校に限定して実施する予定であったが、岐阜県教育委員会の協力で全県対象に拡充することができた。 しかし、書面調査(アンケート)調査に基づいて、小規模化に対応した教員の授業力育成に関する取組や研究組織体制について特定の中学校の訪問調査を実施することができなかった。これはこれからの課題である。また、本年度、予定していた他県の小規模校の取組に関する訪問調査を実施できなかったことも、今後取り組むべき課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の「現在までの進捗状況」と関連しており、およそ以下のとおりである。 当該年度の書面調査(アンケ-ト調査)結果の分析に基づいて、同僚に同教科担当教員がいない若手教員がどのような学びの課題を抱え、どう対応しているか、異教科担当教員からいかなる学びをしているか、その可能性や課題はどのようなものか、免外教科担当の負担はどのようなものか等の実態を明らかにし、教育委員会に提言する。 これを参照しつつ、岐阜県内や岐阜県外の小規模校の訪問調査を行い、若手教員の授業力形成とそれをめぐる校内支援の状況を明らかにする。 引き続いて、実践的取組として、特定の小規模中学校におけるアクションリサーチを企画・実施し、校内のスタッフを軸とした異教科コミュニティでの学びと、外部リソ-ス(大学、教育委員会、近隣校)の活用による同教科コミュニティでの学びの組み合わせによる、若手教員の授業力向上を目指す。 そのなかで、教科部会が成り立たず、他教科に学ばざるを得ない前者のコミュニティでの学び(他教科における生徒の学びの様相、教師の課題設定や問題や教材開発等を、自身の教科に引き寄せたり当てはめたりして、各教科を貫いてどんな資質・能力を育むかを考えて単元や授業を構想し実施するプロセス)に協働的に関与し、その学びの可能性や課題を分析考察する。
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Causes of Carryover |
当該年度は、岐阜県内のある特定の中学校(T中学校)をフィールドとする、過疎地域小規模校活性化に向けた連携協働プロジェクトの企画立案・実施・分析考察を中心に展開し、その一方で、岐阜県内の全小規模中学校対象の書面調査(アンケート調査)に関しては、データの集計着手にとどまり、その整理や分析等に至らなかった。それと関連するが、岐阜県内及び他県の過疎地域小規模校の訪問調査(現状分析や様々な取組に関する情報の収集と分析)を展開できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度、岐阜県内の全小規模校対象の書面調査(アンケート調査)に関して、データの整理や分析を展開し、小規模中学校の若手教師の授業力育成、校内連携に関する課題を明らかにするとともに、岐阜県内の小規模校訪問調査によって、課題解決に向けた取組・工夫等に関する情報を整理・分析する。そこから得られた知見も手がかりにして、次年度、連携協働プロジェクトを継続的に展開する。さらに、他県の過疎地域小規模校の取組に関する訪問調査を実施し、より広く小規模校の現状を把握し、その課題解決に向けた種々の取組・工夫に関する情報収集を進める。
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