2018 Fiscal Year Research-status Report
アクションリサーチからの博士課程Ed.D.カリキュラム・指導方法の開発的研究
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16K04465
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
倉本 哲男 愛知教育大学, 教育実践研究科, 教授 (30404114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹藤 博文 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (70523380)
中野 真志 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90314062)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Ed.D. / 半構造化discussion法 / CPED / コロンビア大学 USA / 実践的探求 / 実践的実験 / 実践的研究論文 / 実践的課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の調査方法は、主として本研究の「半構造化discussion法」による。半構造化インタビュー法に類似する半構造化discussion法は、調査側が資料を提示し、回答側と共同して相互に検討する質的調査法の一形態である。よって、完全なる自由(無意図的)discussionではなく半構造化discussionとした。特に、第29回アメリカ教育学会(2017年10月28日@愛知教育大学)のシンポジウムにて論じた成果を受けて、2018年3月4日、Teachers College, Columbia University, USAにて半構造化discussionを実施した。提案資料は主としてEd.D.とアクションリサーチ(以下、AR)の関係性についての提案内容であった。調査者は、倉本・丹藤・中野の3名であった。 全米でEd.D.の発展上、その中心的役割を果たしている団体が「教育博士に関するカーネギープロジェクト」(The Carnegie Project on the Education Doctorate, 以下、CPED)である。CPEDは2007年・加盟25大学で設立され、2018年・現在では、アメリカ・カナダ・ニュージーランド等、105大学にも及ぶ国際的プロジェクトである。 CPEDのEd.D.定義とは「教育における職業的博士であり、固有の実践を対象にして、新しい知識を創造し、教育実践者の職業的な専門性を発展させるもの」と論じており、そのEd.D.カリキュラムを構成する概念を、後述するARの視点もふまえながら、以下の4点に整理している。①「実践的探求」(Inquiry as Practice)②「実践的実験」(Laboratories of Practice)③「実践的研究論文」(Dissertation in Practice)④「実践的課題」(Problem of Practice)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研のこれまでの成果として、以下の論文を発表したことが集大成となる。 2019年3月 倉本哲男 「アメリカにおけるEd.D. カリキュラムの研究 ‐ハワイ州立大学(University of Hawaii)のEd.D. 指導論を事例に‐」『アメリカ教育研究』アメリカ教育学会編 29号、pp.29-43.(依頼論文)。 2018年度、CPED最優秀賞に選考されたEd.D.プログラムは、ハワイ州立大(以下、UH)である。これは、CPEDが提案するEd.D.概念を典型的に具現化したプログラムであると評価され、特に、フィールド・プロジェクト(Field-Based Projects)と、及びEd.D.研究プロジェクト(Individual Practitioner Research Project)の2種類のプロジェクトを両立する点に最大の特徴があった。調査1:UHのEd.D.カリキュラムの全体的特徴について整理し、特にEd.D.におけるARの有効性を検討する観点から、CPEDでも評価が高いフィールド・プロジェクト(Field-Based Projects)の特徴を調査した。調査2:UHのEd.D.論文のルーブリック評価論に焦点化し、調査1のARの視点もふまえつつ、Ed.D.論文の指導(審査)プロジェクトの特徴を調査した。 これらの調査結果として、ハワイ州立大の「協働ARプロジェクト」は、以下のように再整理できる。1)自己(関係)実践・改善の協働AR(1次円)2)自己・他者との協働AR(2次円)3)関与・コンサルテーション型協働AR(3次円) また、担当者とEd.D.論文(個人/実践研究プロジェクト)を検討し、Ed.D.審査のルーブリック評価表を通してEd.D.指導(審査)方法についての示唆を得た。(Ed.D.論文ルーブリック表を完成させた。)
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Strategy for Future Research Activity |
以上に鑑み、CPEDの具体的な理解を進める意味で、事例校(ハワイ州立大)のEd.D.プログラムを、更に検討する。 よって、ハワイ州立大などに典型的なEd.D./ARとは、「自己(関係)実践の改善を通して、教育的資質・能力に関する自己成長を実感できるように実施する第一人称の実践研究であり、実践に関与・観察しながら省察(Reflection)と実証によって自己(関係)実践を発展するもの」と定義され、実践研究の方法論やリサーチデザインを学び、可能な限り体系的に一般化し、省察を通して実践の反復可能性を求める点に大きな特徴がある。 上述の視点を踏まえ、より具体的なEd.D./AR能力とは、「①教育事象の因果関係を把握し、学校教育が抱える諸問題に対応した研究能力。」「②学術的知見を再構築し、教育方法、教材を開発する研究能力。」「③理論と実践の検証能力(データ処理能力)を身につけ、学校教育の実践を理論化し、指導に活かす能力。」等と整理でき、結論的に本研究からの示唆は、Ed.D.レベルの授業論や論文指導論等に対する有意義なヒントになり得る。
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Causes of Carryover |
アメリカ・ワシントン州立大学のEdDプログラムに参加して、最終考察の予定であったが、UHの研究者教員との調整が思うように進展せず、2019年4月以降にずれ込んだことによる。また、アメリカ教育学会にこれまでの研究成果を発表し、論文投稿をしたが、その結果が遅れている。その結果も加味して調査予定であっただけに、その意味でも翌年度にずれ込んでしまった。これに加え、教職大学院と博士課程の接続に関する研究を、アクションリサーチの徹底の視点から展開予定である。(例えば、UHのEdDプログラムに教員、或いは博士院生が参加する等を検討している。)よって、以上のことから、補助事業期間を延長願いとした。
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Research Products
(9 results)