2018 Fiscal Year Research-status Report
臨床教育学的アプローチによる若手教師の実践力形成過程に関する研究
Project/Area Number |
16K04475
|
Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
辻 敦子 京都ノートルダム女子大学, 人間文化学部, 講師 (30634232)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 臨床教育学 / 物語(ナラティヴ) / 教師の資質形成過程 / 省察 / 意味生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年目にあたる本年度は、昨年に引き続き、若手教師が持続的に自身の教育方法や教育観を練り上げるための協働実践研究グループ「たねの会」を研究フィールドとして、若手教師のナラティヴ資料を収集した。ナラティヴ資料に基づいて若手教師の課題意識の変化を分析するとともに、研究フィールドの生成・変容・継続に関わる要件についても検討した。なお、当初3年間の研究を予定していたが、実践力形成「過程」にアプローチするためには、より継続的に「語りの変容」を検討する必要があるため、補助事業期間の延長を申請し承認されている。 1.現職教師と研究者による協働的実践研究の遂行:キャリア10年未満の若手教師とベテラン教師をメンバーとする協働研究フィールド「たねの会」を年に2回の頻度で開催し、若手教師のナラティヴ資料収集を積み重ねた。 2.若手教師のナラティヴ資料の分析:1の研究フィールドにおいて収集した若手教師のナラティヴ資料をテクストとして、臨床教育学的アプローチによる分析を行った。参加者の学校における役割変化が生じる(若手から中堅の入口へ)ことで、各自の課題意識にも変化が見られた。教師自身が自らの実践を振り返る「省察」の態度の深化には、学校における関係性の変化が大きな要因になっていると考えられる。 3.ゲスト研究者を招いての討議:「たねの会」に、元奈良女子大学附属小学校副校長である椙田萬理子氏を招き、「言葉と子ども」という観点から若手教師の直面している問題を共に考察した。参加者から「楽しい」「やりがいがある」という言葉が多く聞かれるにもかかわらず、「このままでいいのか」という焦りについても異口同音に語られ、その焦りがどこに向けられているのか、語り手にもつかみきれないという、意味づけすることが困難な語りを共有する場面となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の眼目である若手教師のナラティヴ資料収集、および、その分析については、「たねの会」の継続的開催により順調に積み重ねることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
若手教師とベテラン教師がお互いに語り合う中で、教育を語ることががいかに変容していくのかを考えるために、研究フィールドである「たねの会」で織りなされる言葉を「意味生成」および「物語」という観点から分析することを最終年度の課題とする。
|
Causes of Carryover |
ナラティヴ資料収集のための研究会開催が予定回数に至らず、研究会開催に関わる指導助言者への謝金や出張費、および、研究会記録のテープ起こし費用を支出できなかったため。2019年度に、研究会における指導助言者への謝金および研究会記録のテープ起こしに使用する。
|