2016 Fiscal Year Research-status Report
学士課程における体系的カリキュラムの構成要素に関する実証的研究
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16K04480
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
伊藤 奈賀子 鹿児島大学, 教育センター, 准教授 (10387459)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 体系的カリキュラム / 地域関連学部・学科 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、カリキュラムの現状把握のための調査をwebを用いて実施した。対象は、コンテンツ・ベースのカリキュラムと学際的カリキュラムである。 コンテンツ・ベースの体系的カリキュラムの事例としては物理学を取り上げ、国立大学における物理学系学科のカリキュラムについて調査を行った。その結果、物理学系学科のカリキュラムにおいては、物理学の学問的発展段階に沿う形で体系性が担保されている可能性が高いことが示唆された。 一方、学際的カリキュラムの事例としては、地域関連学部・学科のカリキュラムを取り上げた。地域関連学部・学科のカリキュラムは、そもそも特定のディシプリンに関する学問的発展段階に沿う形で構築することは困難である。そこで、体系的カリキュラムを構築する上での柱となる要素が何であるかを明らかにするために調査を行った。その結果、学習活動上、知識の習得→実践→省察→改善といったサイクルが強く意識されたカリキュラムであることが推測された。これは、いわゆるPDCAサイクルとも合致するものといえる。しかし、高等教育段階における学習活動のサイクルとしてこれが適切であるか否かについては、必ずしも評価が一致しているとは言い切れない。また、ディシプリンについては、1つの柱として経営学が意識されているカリキュラムが見出されたものの、ディプロマ・ポリシーや教育目標の形で経営学的知見に基づく能力の育成を明記しているわけではなく、最終的な学位も「学士(経営学)」とは限らなかった。 こうしたことから、地域関連学部・学科におけるカリキュラムの柱となる要素については、いくつかの可能性が見出されたものの、明確に推定するまでには至らなかった。今後さらに詳細な調査・分析を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
webを活用した調査は当初の予定通り実施することができた。その結果として、物理学系学科については学問的発展段階に沿ってカリキュラムが構築されていることが明らかになった。 一方、地域関連学部・学科については複数大学に共通するカリキュラムの体系性を保つための要素を推定しきれず、訪問調査までには至らなかった。しかし、いくつかの要素を具体的な候補として抽出することができた。これらをグループごとに整理することにより、訪問すべき事例及び調査内容について再検討することができた。 以上により、当初の予定とは異なる部分はあるものの、全体としてはおおむね順調に進展しているものと判断した。平成29年度は今年度の成果を踏まえて訪問調査を実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、基本的に当初の予定から大幅な変更はない。ただし、平成28年度に予定していた訪問調査が翌平成29年度に持ち越されたため、これについては確実に実施する必要があると考えている。 また、訪問調査の実施と合わせて、体系的カリキュラムの構築に関するモデル開発も行う必要がある。体系的カリキュラムを構築する上でどのような要素が重要な意味を持つものであるかについて分析を進め、モデルの提示に向けた作業を進める予定である。
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Causes of Carryover |
web調査の結果を踏まえ、当初計画していた訪問調査を実施しなかったことから次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は訪問調査を確実に実施する。訪問先としては、高知大学、愛媛大学などを予定している。また、学会等での発表も行う。
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Research Products
(1 results)