2016 Fiscal Year Research-status Report
青少年の挫折経験に関する人間形成論的研究ー「生の語り」の分析からー
Project/Area Number |
16K04489
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
鳥光 美緒子 中央大学, 文学部, 教授 (10155608)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野平 慎二 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50243530)
藤井 佳世 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (50454153)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 人間形成 / ビオグラフィー / ライフヒストリー / 学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画においては、計3回の研究会を行うこと、また、研究会の実施にあわせて、インタビュー調査を実施することを予定していた。結果として、インタビュー調査については当初の予定以上の調査を行い、調査協力謝金およびインタビューのテープ起こしの支払いに予定していた以上の費用が必要となり、前倒し支払請求を行っている。 研究会については予定していた3回にくわえ、急遽、当該研究目的にかかわるドイツの代表的研究者を中央大学の客員教員として2017年度に招聘することがきまったことにともなう計画変更についての打ち合わせを、研究分担者と1回行った。詳細は以下の通りである。 1)インタビューの実施状況。 7月から12月にかけて、計9名のインタビュー調査を行った。そのすべてについてテープ起こしをすませ(業者に依頼)、そのうち、2名分についてはトランスクリプト(研究代表者および研究協力者によるもの)を形成した。 2)研究会の実施状況。①5月28日から29日にかけて、第一回研究打ち合わせ会を、研究分担者、連携研究者、研究協力者、計6名の間の、当該研究目的に関する研究の相互の共有と、今年度の研究計画の決定のため、中央大学にて行った。②8月11日に、広島大学東京オフィスにて、研究代表者・分担者・連携研究者・研究協力者5名で、研究会を行い、7月から8月にかけて行ったインタビュー事例3例の概要、及び、インタビュー方法と解釈についての研究の現状と課題についての相互の知見の共有を図った。③10月25日、中央大学にて研究代表者・分担者間で、今年度と来年度の研究計画について再検討した。④2017年2月23日・24日、広島大学東京オフィスにて、4つの事例について報告討議を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね、順調に研究計画が進展している。とくに、インタビューの事例数については、当初計画では数例であったところ、結果として12例(うち3例は科研開始前にすでに試験的に行っていた事例)のインタビューデータが収集された。研究会の開催と検討状況についても、おおむね当初の研究計画にそって進行している。成果と課題の詳細は以下のとおりである。 1)2016年8月11日、及び2017年2月23日・24日に行われた研究会をとおして、事例の全体の概要を把握し、今後、共同で集中的に検討する事例の候補について、一定の手応えをえた。2017年度については、それらの事例を中心に、学会などを通じて、外部からの評価をえることを計画している。 2)インタビュー法とその解読に関する方法論的問題。当初、ドイツ語圏の先行研究にしたがって、インタビュー手法としてシュッツェ,F. の方法に依拠することを考えていた。現在もそれが本研究プロジェクトにおいて、中心的なモデルであることは変わらないが、同時に、インタビュー法は、それが形成され活用されててきた、人文科学から社会科学にわたる多様な研究領域、国による研究動向の違いなどによって、きわめて錯綜し多岐にわたるものであることが明らかになってきた。それら多様な手法のなかで、シュッツェの方法のもつ独自性と特徴を明らかにするとともに、場合によっては他のさまざまな手法を参照することも検討課題として浮上している。 3)人間形成論的観点からの解読の試みについては、これまでのところ、ドイツ語圏の先行研究の成果を理解するという地点にとどまっている。その研究の現状と課題について、いっそうの解明が課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2017年度においても、2016年度同様、インタビュー調査を行うとともに、それと平行して事例検討のための研究会を実施する。事例数としては今年度とほぼ同じ程度の事例数を予定、研究会は、8月と2月の、2回の開催を予定している。8月の研究会については、研究代表者・分担者、連携研究者、研究協力者などによる研究メンバー間での開催であるが、2月の年度末の研究会においては、教育哲学の領域をこえて、教育社会学など他領域のライフヒストリー研究者の参加をえて、事例検討会を行うことを計画している。また、それにくわえて、外部評価をえる機会として以下の企画を計画している。 1)教育思想史学会のコロキウムにおける報告。「人間形成論的ビオグラフィー研究の進め方ーインタビューから解読まで」(仮)。司会と報告を科研メンバーが担当、指定討論者としては教育哲学領域の研究者を予定。 2)公開シンポジウムの開催。中央大学において。司会と報告は科研メンバーが担当。指定討論者として、ドイツハンブルグ大学のハンス・クリストフ・コラー教授を予定。具体的な事例を一例抽出(すでに抽出済み)、それについての人間形成論的解読を、科研メンバーが提示、それについての評価とコメントを、コラー教授に依頼する。そのためには、事例のドイツ語訳をあらかじめコラー教授に送付する必要があるが、それについては、ドイツ在住の研究協力者が担当する。 3)教育哲学会のラウンドテーブルにおける報告。司会と報告を、科研メンバーが担当。コラー教授にも、報告者として参加してもらう。このラウンドテーブルでは、とりわけ、人間形成論的に解読するということはどういうことなのか、コラー教授の提案する「変容としての人間形成」という見解を中心に討議検討する。
|
Causes of Carryover |
研究分担者2名のうち、藤井佳世氏に関して、発注済みの書籍が当該年度中に届かなかったこと、また野平慎二氏に関しては、予定していた交通費の未使用によるものである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
野平慎二氏については、未使用分の交通費を,今年度の研究会や情報収集のため使用する。
|