2016 Fiscal Year Research-status Report
20世紀初頭米国のスクール・ソーシャルセンターにおける道徳教育としての市民性教育
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16K04496
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 隆之 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60288032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 健市郎 関西学院大学, 教育学部, 教授 (50229887)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 進歩主義教育 / 市民性教育 / 道徳教育 / スクール・ソーシャルセンター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究に関連する文献を収集と分析を中心に研究を進めた。研究成果としては、第一に、スクール・ソーシャルセンターの理念の基盤となった、デューイのスクール・ソーシャルセンター論について、市民性概念に注目して分析した。デューイは、学校とコミュニティの関係を強化することにより、市民性教育を改善しようとした。他方、第一次世界大戦後には民主的な市民の育成を、大恐慌後には経済問題に関与できる市民の育成を説いた。社会状況や時代の要請に合わせて市民性概念を拡張し、それに即してスクール・コミュニティを再構築していることがことが明らかになった。第二に、デューイの主張を背景として、コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジ附属学校ホーレスマン・スクールで行われた市民性教育について考察した。同校の市民性担当講師であったハッチ(Roy W. Hatch)に注目した。ハッチは、教科外活動や学校が位置する近隣の施設や自然環境を活用して、学校全体で人格を形成する方法を立案して、実際に指導したことを明らかにした。第三に、スクール・ソーシャルセンターの推進者であるペリー(Clarence A. Perry)や、パーキンス(Dwight H. Perkins)のスクール・ソーシャルセンターの理念や実際について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が10月から特別研究機関でアメリカに滞在した。そのため、資料の収集と分析については予定通り進めることができたが、研究分担者と十分に議論することが難しかった。また、アメリカ新教育運動やソーシャルセンター運動に関する史的研究や理論研究、本研究が対象とする1900年頃から1930年頃までのアメリカにおける道徳教育の分析も課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
ソーシャルセンターとしての学校や、そのような学校が存在した都市を取り上げて、道徳教育としての市民性教育のカリキュラムや方法、それを実現するための市の取り組みなどについてふみこんで研究を進める。スクール・ソーシャルセンターの事例としては、ニューヨーク市にあった私立の進歩主義学校エシカル・カルチャー・スクールや、コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジの付属校ホーレスマン・スクールに注目する。とくに新教育の影響を受けて新設された「ニューヨーク市学習」における、警察、消防署、市役所、電力会社、移民局、ミュージアムといった公的諸機関と連携した学習活動について精査する。同校で行われた市民性・道徳教育について実証的に解明する。研究協力者は、スクール・ソーシャルセンターについて、引き続きペリーやパーキンスに注目して、社会教育、都市計画、学校建築といった観点から考察する。それにより、参加的市民性を育成する学校をつくるための社会的・制度的条件を解明する。
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Causes of Carryover |
研究代表者が特別研究期間を得て、アメリカに滞在していたために旅費が未使用となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アメリカでの調査研究費として使用する予定。
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