2016 Fiscal Year Research-status Report
学びの主体形成を促すパーソナル・ライティングの具体的指導方法の開発と拡張
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16K04510
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
谷 美奈 帝塚山大学, 全学教育開発センター, 准教授 (60582129)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パーソナル・ライティング / 学びの主体形成 / 自己省察 / 自己の物語 / 自己形成史 / セルフ・オーサーシップ / 実存的な学び / 学びの三位一体論 |
Outline of Annual Research Achievements |
ギデンズ(Anthony Giddens)は,後期近代社会に生きる人々は「自己の再帰的プロジェクト(the Reflexive Project of the Self)」,すなわち自己の物語による自己アイデンティティの構築と再編を行うことで,その「時代を生き抜く」可能性を示している.それはまた,近年,「21世紀を生きる新しい能力」が教育目標として注目され,これまでは自然に身についてきたであろう「自己との関係」と「他者との関係」を教育目標に設定する議論にも通底する.さらに,マゴルダ(Marcia B. Baxter Magolda)は,これらの問題を背景に「セルフ・オーサーシップ(Self-Authorship)」の重要性を提示しているのである. このような問題意識から,当該年度は,パーソナル・ライティング(以下、PWと記す)による「書く」経験が,大学生の「自己形成史」にどのような「意味」をもたらしたかを,長期的なスパンから明らかにした.そのことによって,後期近代に生きる大学生の自己形成史の促進に有効な教育方法のひとつとしてPWを提示できうると考えたからである. 調査は,2011年度・大学初年次生に実施したPWの元受講者(当事者)15名に対して,PWが彼らの自己形成史にどのような意味をもたらしたのか,についての聞き取り調査を行った.分析の結果,彼らにとってのPWの意味は「学びのモチーフ」と「人生のモチーフ」に連繋する自己形成史を促進する学びであるということと,その学びの構造は「自分探し」の欲求に自らの存在意義とその可能性を見出しうる「実存的な学び」であることが明らかになった. これらの結果から,後期近代社会に生きる大学生の自己形成史を促進する新しい学びとしての可能性がPWには一定程度認められた,ということができる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画および方法から変更を行った。それによって、今後の研究の布石となる研究成果を一年目で出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、事例研究の成果をもとに理論研究に力を入れる。また、パーソナル・ライティングの有効性を他大学・他分野をフィールドに実践・検証を行う。
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Causes of Carryover |
物品が計画よりも安く購入することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外研究者との共同研究のための謝金に使用したいと考えている。
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Research Products
(11 results)