2016 Fiscal Year Research-status Report
植民地統治下台湾における「学校文化」の形成に関する基礎的研究
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16K04511
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
山本 和行 天理大学, 人間学部, 准教授 (00584799)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 学校儀式 / 芝山巌 / 神社 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は日本の植民地統治下の台湾に設置されていた初等教育機関(公学校、小学校、国民学校)において開催されていた学校儀式や勅語奉読式について、台湾各地での開催状況や学校儀式の位置づけを明らかにすることを目的に、公的機関や学校における量的調査に重点を置いた研究計画を遂行した。 具体的には、台湾の国史館台湾文献館所蔵の「台湾総督府公文類纂」所収の公文書、中央研究院、国立台湾図書館、国家図書館、台湾大学図書館といった台湾各所の日本統治期所蔵資料について調査し、植民地統治下の台湾でおこなわれていた学校儀式の全体像を把握し、各種資料の分析を進めた。 以上の資料調査および分析を通じて、従来明らかにされていなかった学校儀式の実施状況と、学校内にとどまらないような教育関連儀式の存在とその具体的な様態(たとえば芝山巌祭など)について明らかにすることができた。 このことは、学校儀式というものがただ単純に学校に通う子どもたちに向けておこなわれていたものであるというにとどまらず、台湾総督府における学務官僚や各地の行政官、教員、宗教施設(神社)関係者、地域の有力者層などを巻き込み、政治的な思惑をはらみつつ展開されたものであることが明らかとなった。したがって、ここには単に教育行政のありようや教育内容に注目していただけではわからない、教育をめぐる複雑な政治的関係性とその多様さが見いだせるのであり、教育と植民地統治の分かちがたい関係性、およびそこに含まれる問題性を浮かび上がらせることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は歴史資料にかかる量的調査に重点を置いた研究計画を立てており、その点についてはおおむね当初予定していた資料調査をおこなうことができ、関連資料を収集・分析することができた。 ただし、当初予定していた初等教育機関(国民小学)における学校沿革誌などの調査・収集が、調査先との日程調整などの問題から十分に進めることができなかったため、進捗状況としては「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度における量的調査による研究成果を基に、台湾全土で展開されていた学校儀式の具体的な内容について、個別の教育機関における実際の儀式開催状況などに焦点をあてて、巨視的・微視的の両方の側面から検討を進める。そのためには、本年度に完了することのできなかった、個別の教育機関における調査を優先的に進め、個々の学校に関する資料の収集と調査を進める。
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Causes of Carryover |
先述した研究の遂行状況により、教育機関での所蔵資料調査が当初の計画より進まなかったため、資料調査にかかる必要機材の購入(デジタルカメラ、スキャナなど)や資料調査の実施機会が少なくなったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の調査に向けた必要機材の購入と資料調査の実施によって、次年度使用額を使用する予定である。
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