2016 Fiscal Year Research-status Report
イギリスにおける中等教育試験の成立-高大接続の視点から
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16K04513
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Research Institution | Hiroshima Jogakuin University |
Principal Investigator |
中村 勝美 広島女学院大学, 人間生活学部, 教授 (40310924)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中等教育修了資格試験 / イギリス / GCSE / 中等学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、研究課題に関連する先行研究のサーベイを行うとともに、イングランドを中心とする中等教育修了試験の概要について調査研究を行った。 第一に、現在イングランドに存在するの3つの試験団体、Edexcel, OCR, AQAの歴史的起源について調査を行った。 これら試験は、それぞれ、①ロンドン大学試験委員会、②オックスフォード大学およびケンブリッジ大学の各地方試験委員会、③合同入学登録試験委員会(マンチェスター大学、リヴァプール大学、リーズ大学、のちにシェフィールド大学とバーミンガム大学が加入)から発展したものである。これらに関連する文献の収集および、その内容整理を行い、概要を把握した。 第二に、教育院諮問委員会報告書を主要資料として、中等学校試験統一化の過程について明らかにすることを試みた。第2次世界大戦前の段階では、中等学校のカリキュラム編成の煩雑化や中等学校生徒への過度な負担、試験競争の過熱化を防止するために、多種多様な試験を統一する必要性は、とりわけ中等学校関係者間では広く共有されていたものの、個々の試験団体の独立性や、中等学校の特色を保持することがより重要な価値として認識されていた。そのため、中等学校試験の完全な統一ではなく、試験相互の水準を明確にし、互換性を高めることによって、複数受験を避けることにより、制度の一体化を推進したことが明らかになった。 これらの研究成果について、学会発表を行い、論文を紀要に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、資料の分析、および研究発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度7月に、中等教育修了時に獲得する能力や中等教育の社会的な機能について比較研究を行うため、日本の教育社会学研究者と研究会を行う。大学入学準備あるいは大学接続を目的とした中等教育と、職業教育の理念や制度、教育内容を整理し、日英の比較研究を行う。日英の比較により、イングランド中等教育の理念およびカリキュラムの特色であるアカデミック・ドリフトについて、その社会的背景を明らかにすることが期待できる。 8月または2月に、イングランドの中等学校カリキュラムの歴史に関する専門家である研究者(ロンドン大学教育学研究所教授Gary McCulloch)より研究に関する助言を受けるとともに、イングランドでの資料調査を行う。
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Causes of Carryover |
予測不能の事態により、長期休業中に海外での調査研究ができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は国内で関連する研究を行う研究者と研究会を開催する。また、夏季休業または春季休業中にイギリスでの現地資料調査及び研究者との打ち合わせを行う。
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