2016 Fiscal Year Research-status Report
教職倫理教育と技術者倫理教育の方法論を応用した研究者倫理教育プログラムの開発
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16K04519
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Research Institution | Oyama National College of Technology |
Principal Investigator |
上野 哲 小山工業高等専門学校, 一般科, 准教授 (90580845)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | e-ラーニング / アクティブラーニング / CITI Japan / ポートフォリオ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年9月から平成29年1月にかけて、国内の総合大学理工系学部及び理工系大学30校、全国の国立工業高専において、どのような研究者倫理教育が実施されているかを調査した。調査方法としては各高等教育機関がウェブ上で公開しているシラバスやコンプライアンス遵守の具体的方法を示したウェブページを参考にした。研究者倫理教育を実施していると公開されているにもかかわらず、その具体的実施方法が不明確な教育機関に関しては、メール等で問い合わせ、その内容について教示を得た。 調査結果については、1)継続性(単発か連続か)、2)独自性(自前のプログラムか外部委託プログラムか)、3)具体的な教育方法、という3つの観点から分析を進めている。現在精査中だが、現時点では1)に関しては、1年間に1度ではあっても継続的な研究倫理教育の機会は多くの高等教育機関で設けられている一方で、2)の独自性に関しては圧倒的に多くの教育機関はCITI Japan プロジェクトのe-ラーニング教材の活用で研究者倫理教育を実施していると見なしている現状があることが明らかになった。そのため、3)の具体的な教育方法についても、e-ラーニングが多数を占めている。中には事例を用いてグループで討議・発表するアクティブラーニング型の教育方法を採用している教育機関も見受けられるが、例えばポートフォリオなどを用いて、数年の間継続的に研究者としての自己の姿勢や価値観を仲間と共に省察する形での研究者倫理教育をおこなっている高等教育機関は皆無であった。 また研究者倫理教育において明確な解答へ導く方法がない、真偽の判断が難しいグレーゾーンの問題にどのように対応すべきかについて、環境倫理におけるソフト・ゾーニングの思想及び生命倫理の生命維持医療の可否を研究することで知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、日本の高等教育機関で行われている研究者倫理教育の具体的実施状況の調査には質問紙形式(アンケート)を用いる予定であった。しかし現在多くの高等教育機関において研究者倫理教育(または研究倫理教育)の詳細についてはほとんどウェブ上で公開されていることが判明したため、ウェブを細かくチェックし不明な点についてはメール等で問い合わせるという方法で、質問紙を用いず合理的に計画を進めることができた。 また当初はおよそ80校の大学を対象に調査をおこなう予定であったが、私の勤務先でもある国立工業高専(独立行政法人国立高等専門学校機構に所属する工業高等専門学校)も対象に入れたため、公開されていない内部事情等も含めた情報をより短い時間で入手することができた。 こうした理由により調査にかける時間が短縮されたため、分析に関しても早めに取りかかることが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度以降の研究において最もメインとなるのは、「日本における研究者倫理教育においては、なぜ技術者倫理教育や教職倫理教育において定着している脱知識型の『討議をベースとした事例検討(ケースメソッドまたはケーススタディと呼ばれている)』ではなく、個人学習をベースにした知識暗記型の学習方法が採用されているのか」を分析検討したうえで、継続的な自己省察を踏まえて「討議をベースとした事例検討」を長期的におこなうための教育方法の確立をおこなうことである。これはいわば、現状ですでに普及している個人学習をベースにした学習方法を否定せずに「討議をベースにした事例検討」を融合させる方法である。 この研究倫理教育方法を確立するため、平成29年度はシンガポールまたはタイの高等教育機関における研究者倫理教育の現状を把握する。本研究では日本の研究者倫理教育の主眼を単なる「研究者として不正行為をしない」ことを求める欧米モデルのコピーの導入ではなく、時間をかけて人格的な意味での「善き研究者」を育てることにおいているため、研究者育成に儒教的要素が含まれる(例えば「先輩は後輩の良きロールモデルとなるべきだ」のように)アジアの高等教育機関における研究者倫理教育にヒントを見いだす。 平成30年度はこの方針に基づき、継続性のある(長期的な)自己省察と他者との討議をベースにするポートフォリオを用いた研究者倫理教育プログラムを確立・試行し、単発的・知識伝授型の研究者倫理教育とは異なるプログラムを提言する。
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Research Products
(6 results)