2016 Fiscal Year Research-status Report
農山漁村における若者コミュニティの現代的展開―地域に根ざす青年期教育の再検討
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16K04523
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
辻 智子 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (20609375)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 農山漁村 / 若者 / 青年期教育 / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、農山漁村(「田舎」「地方」)の社会の変容・再編と地域づくりの過程に注目し、そこにおける若者たちの存在・生活(労働)・活動(若者仲間・若者集団・若者ネットワーク)の実態を明らかにすることで地域に根ざした青年期教育の可能性を探求することを目的とする。その柱は大きく以下の2つである。 (1)東日本大震災被災地域とそこにかかわる若者たちの動き ①被災地域に暮す若者たちの動向、②被災地域とかかわる全国各地の「地方」の若者たちの同行を継続的に追っている。①については、震災前からその地域に暮す地元の若者、震災を機に外からやってきた若者(一時的な滞在も含む)、震災を機に戻ってきたUターンの若者たち、各々の状況とともに、相互に出会いながら協力・連携しつつ震災後の地域づくりに取り組んでいる事例を追った。②については、被災地域の若者たちとの継続的な関係を基盤に自らの地域活動にどのように反映させていこうとしているか、今回は主に防災・減災へのとりくみとの関係から事例を追った。その成果は『生きる~東日本大震災と地域青年の記録~』第5号として発行した。 (2)北海道内の町村と若者たち ①置戸町およびその隣接町である訓子府町を訪問し、町の状況とそこでの学校教育・社会教育にかかわる近年の動向についてまずは町役場の職員からヒアリングを実施した。比較をすることで各々の町の独自性と共通性を把握することができた。また両町とも地域青年団が存続し現在も一定程度活発に活動を続けていることが分かった。この調査の内容は一部を『教育社会科学調査実習2016報告書』に収録した。②月形町での若者活動の組織化の取り組みの事例調査については、当該町にて若者支援の地域活動をコーディネートするNPO法人コミュニティワーク研究実践センター職員から、農村地域での若者活動支援の位置づけとこれまでの経緯、具体的な活動について話をうかがった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、大きく2種類の調査を実施すること(道内調査として月形町と置戸町、被災地調査として地域青年集団活動)を挙げた。道内調査は初年度であり、それらの状況調査と事前の情報収集、活動実施者らとの関係づくりを目指し、概ねその目的を達成することが出来た。また、被災地調査については、平成23~27年度科学研究費助成研究「地域共同体の変容と青年集団―東日本大震災に直面して」の発展と位置づけており、記録化作業を柱に、今年度も記録冊子を発行することができ、初期の目的は十分達成することが出来た。 道内調査については、置戸町・訓子府町に関して、調査の内容の一部を北海道大学教育学部『教育社会科学調査実習2016報告書』に収録した。町教育委員会社会教育課の青年教育担当職員へのヒアリング内容は分析できていないため次年度への課題としたい。 被災地および地域青年集団調査は、岩手県・宮城県・福島県の震災被災地域における動向を若者の視点からとらえた記録、またそれら被災地の青年とつながりを持ちつつ地域で活動を展開する「地方」の青年集団の取り組みの報告を、『生きる~東日本大震災と地域青年の記録~』第5号(2017年2月)にまとめ、関係者に頒布した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、①北海道内調査、②震災被災地及びそことかかわる全国的な「地方」青年ネットワーク調査の大きく2つの柱に沿って進める。①については、月形町(樺戸郡)と置戸町(常呂郡)を計画しているが、訓子府町(常呂郡)も対象地に加えることとする。理由は、置戸町の隣接町である訓子府町と比較することで、各々の町の固有の事情と、道内オホーツク圏の小規模自治体としての共通点がより明確に浮き彫りになると初年時の予備調査から分かったためである。以上を踏まえ本年度の研究は次のように進める。 ①北海道内調査:月形町については、毎月少なくとも1回は現地を訪問し、町の趨勢や現状を統計資料、歴史資料、現地住民からのききとり調査によって明らかにするとともに、現在展開されている若者支援活動に同行しながら、その実態を把握する。これについては研究代表者の所属大学の大学生たちにも参加・協力を要請する。置戸町・訓子府町については、昨年度の報告書をもとにした報告会ないし懇談会を開催するために再訪し、両町の地域青年団メンバーと接触し、その活動の現状とそこにかかわる青年たちについての基礎的な知識・理解を得ることを試みる。その際、両町の若者をとりまく社会的な状況との相互関係を十分考慮し、引き続き、統計的資料、歴史資料、当該団体関係資料、関係者へのヒアリングデータの収集を試みる。 ②被災地および地域青年集団調査:引き続き、岩手県陸前高田市および宮城県山元町に注目しながら地元の若者との関係を継続し、今年度も現地調査を実施する。また福島県原発被災地域からの避難者についての定点観測的なヒアリングも継続的に実施するとともに、福島県内での若者たちの新しい動きについても情報収集等を進める。
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Research Products
(2 results)