2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K04524
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
佐々木 謙一 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (30388384)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教育制度 / 条件付現金給付政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、フィリピンの新教育制度「K to 12 Basic Education Program (K to 12)」に関する文献資料を集め、各研究論文についてその概要をまとめ、K to 12の現状と課題を整理した。K to 12はフィリピンの大学入学前教育期間を10年(小学校6年と高校4年)から13年(幼稚園1年、小学校6年、中学校4年、高校2年)に延長する制度改革であり、21世紀型スキルを備えた生徒の育成を目指している。この改革は2011年の幼稚園教育の義務化からはじまり、2016年度は新たに追加した高校教育2年間が開始された。そのため、K to 12に関する現状と課題が、教育現場で経時的に明らかになると予想される。 K to 12の現状分析と課題把握のために、現地の高校で、教員・生徒から聞き取り調査とアンケート調査を行った。調査結果より、大多数の教員・生徒がK to 12を支持しており、基礎学力の向上と国際競争力向上に伴う若年層の失業率低下を期待している。しかし、K to 12に対応できる学校設備や教員が十分ではないことや高校2年間追加されたことに伴う家計負担の問題を懸念している。 先行研究と同様、本研究でもフィリピンの教育指標(小学校・旧制高校の純就学率、コーホート残存率等)のデータを整理することで、児童・生徒が通学し続けることが難しいという課題を明らかにしている。初等教育の完全普及等を盛り込むミレニアム開発目標達成のため、フィリピンにおいては、条件付現金給付政策「Pantawid Pamilyang Pilipino Program(4Ps)」が実施されている。4Psの有効性を確認するために、フィリピン・ラグナ州の公立高校における4Ps受給者を対象として、就学状況を確認したところ、良好であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、研究申請書に示したフィリピンの新教育制度「K to 12 Basic Education Program (K to 12)」とフィリピンの条件付き現金給付政策「Pantawid Pamilyang Pilipino Program(4Ps)」の概要に関する文献サーベイを終え、現状・課題を明らかにした。また、フィリピンにおける就学状況に関するデータの収集・整理と現地調査によるデータ収集を行ない、教育開発の課題把握に努めた。本年度の調査結果の一部を、フィリピンの研究会とバンコクの国際会議で報告した。研究実施計画と照らし合わすと、本研究の進捗状況はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度の成果もふまえながら現地調査や最新文献資料の整理・検討を進め、「K to 12」の課題解決と修了率100%(万人のための教育)を実現するために必要な支援方法の検討に取り組む。K to 12カリキュラムの運営上の現状と課題に関する調査と、フィリピンの公立高校に在籍する4Ps受給対象者の就学状況調査を継続的に行い、可能であれば、諸外国との比較研究も行う予定である。研究成果については、学会・研究会報告を行い、より多くの研究者や教育関係者から意見・感想を頂き、研究活動を進めていく。
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Causes of Carryover |
物価変動等を考慮できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
項目【その他】の消耗品購入に充てる。
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