2016 Fiscal Year Research-status Report
保育者の離職から再就職に至るまでの自己形成プロセスと再就職支援プログラムの開発
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16K04527
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
香曽我部 琢 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (00398497)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 離職 / 再就職 / キャリア / ライフイベント / 結婚 / 他者 / 家族 / 複線経路・等至性モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、今年度、保育者の離職をめぐるさまざまな経験において、保育者が自らのキャリアに関する意識をどのように変容させていくのか、そのプロセスを、時間的変化と社会的・文化的文脈も含めて明らかにしようと考えた。そこで、宮城県と新潟県、山形県の保育者の協力を得て、インタビューを実施した。そして、そこで得られた言語データをもとに、複線経路・等至性アプローチ(Trajectory Equifinality Approach:以下TEA)の複線径路・等至性モデル(以下TEM)を用いて分析を行った。 TEMによる分析の結果から、保育者が離職へ至る多様な経験の中で、【Ⅰ期:不穏な雰囲気・印象の感受期】、【Ⅱ期:離職意識の漸進期】、【Ⅲ期:離職への疾駆期】の3つの期に分類されることが示された。そして、それぞれの期において、自らが過去から思い続けてきた結婚や子育て、出産に対する思い(信念・価値レベル)が社会的方向づけ(SD)となることが明らかにされた。また、一方で、就職した園で出会った他者や家族、自らのキャリア意識が社会的助勢(SG)となり、離職へのプロセスにおいて迷いや葛藤などの感情を生起させていることが示唆された。 これらのSDとSGの狭間におかれ、多様な感情を生起させた保育者は、自らのライフイベントとキャリアに関する価値・信念を揺さぶられるなかで、どちらかの価値・信念を変容させることを強要される。しかし、保育者は離職を決定づける(離職トリガー)経験をきっかけに、ライフイベントも成就させつつ、将来的には自らのキャリアも生かすという、妥協を選択し、「離職」を選択することで、自らの価値・信念レベルを変容させずに、離職へと突き進んでいくことが明らかになった。今年度は、これらのインタビューデータをもとに、質問紙調査を作成・実施し、そのデータを取りまとめている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では、1年目は基礎的資料の収集と分析を実施することとしており、地方と都市部の間で有効求人倍率に違いが大きいことから、実際に都市部と地方部の保育者にインタビューを実施し、そのデータをもとに質問紙を作成し、調査を実施することを計画として示している。 現段階で、仙台市・新潟市などの都市部と山形県の地方自治体でインタビューを実施しており、すでに質問紙を作成して、それを実施している。現段階ではまだ結果は出していないが、あとはその分析を行い、その結果と考察をさらに十分精査した上で10月の学会で発表することを予定し、すでに研究発表を申し込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、1年目で収集した基礎的資料をもとに都市部と地方のどのような保育者にインタビューを実施すべきか、対象者を検討・選定する。インタビュー方法については先行研究をもとにライフライン・インタビューメソッド(Lif-line Interview Method)を検討する。収集した言語データは、1次分析として定性データ分析で概念を抽出する予定で、分析によって抽出された概念を概観しつつ、さらに2次分析として、自己形成プロセスに焦点を当てて分析方法について検討する予定である。
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