2016 Fiscal Year Research-status Report
ベルリンの就学前施設における道徳教育改革の今日的動向に関する総合的研究
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16K04532
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉田 武男 筑波大学, 人間系, 教授 (40247945)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 幼児全日施設 / 道徳教育 / ベルリン |
Outline of Annual Research Achievements |
ベルリンの幼児全日施設における道徳教育改革の今日的動向を解明するために、平成28年度では、文献調査と現地調査を並行して行った。 文献調査としては、次の二つを行った。一つは、幼児期の道徳教育に関する研究書とともに、幼稚園教育要領や保育所保育指針や幼保連携型認定こども園教育・保育要領、さらには各種の審議会答申などを分析しながら、日本の実態を確認した。もう一つは、ベルリンにおける幼児期の教育・保育の実態と改善の試みについて、幼児教育の雑誌や研究書と同時に、ドイツの文部科学省やベルリンの教育委員会が公表している最近の資料を中心に収集し、いくつかの資料については分析を行った。 また、現地調査としては、我が国の施設については行わず、外国の施設について行った。大別して言うと、ドイツの幼児教育・保育は、北欧諸国やイタリアやニュージーランドと同様に生活基盤型であり、アメリカやイギリスやフランスなどの就学準備型と大きく異なっている。しかも、ドイツの幼児教育・保育は、特にイタリアの影響を強く受けていると言われてきた。そこで、イタリアの幼児教育・保育の状況について、関係機関のスタッフと保護者などからインタビュー調査を試みた。そのうえで、ドイツのベルリン市に点在する公立の幼児全日施設の一つを訪問し、幼児教育・保育の状況を観察するとともに、施設長(園長)と数時間をかけて面会し、ベルリン全体の様子と、その施設の理念や実践の特徴についてインタビューを行ったうえで、その施設の実践上の資料を収集した。また、そこで勤務するひとりの男性保育者に対しても、インタビューすることができた。 なお、その施設については、来年度以降も訪問し、継続して研究に協力してもらうことについて、施設長(園長)から承認を得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我が国では、平成28年度は、小学校や中学校の学習指導要領をはじめ、幼稚園教育要領の改訂の年にあたっており、正式にはその年度末、すなわち平成29年3月末に告示された。そのために、新しい幼稚園教育要領の告示を受けて、どのような変化が日本の現場に見られるかについては、予定を1年遅らせて、平成29年度に、先進的な幼児教育・保育の実態を改めて確認することに変更した。 それ以外の現地調査については、おおむね計画通りに実施した。また、文献調査についても、ベルリンの最近の動向を把握するための資料については、おおむね収集できた。また、現在収集できていないものについては、入手の目途はついた。 なお、ベルリンの海外調査の実施時期が遅れた(夏季に実施することも考えられたが、夏季の時期はベルリンの施設が閉鎖されており、断念せざる得なかった)ために、秋季開催の学会発表には間に合わなかった。それゆえ、研究成果の一部については、研究誌において公表することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成28年度に実現できなかった日本の現地調査を平成29年度に行う。そのうえで、ドイツのベルリンの現地調査については、平成28年度に引き続き行う。できれば、平成28年度に訪問したベルリンの施設とともに、別のベルリンの施設も訪問したい。その際には、ベルリン市内の公立の施設だけでなく、比較の意味で、私立の施設も研究調査の射程に入れたい。また、ドイツの中でも、ベルリン以外の場所の施設も訪問し、ベルリンの動向を相対的な視点で検討したい。 文献調査については、以前のものと最近のものとを比較しながら、動向を探る予定である。特に、ベルリンの教育委員会が公表している資料については、綿密に取集することを予定している。
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Causes of Carryover |
我が国では、新しい幼稚園教育要領が平成28年度末に正式に公表されたために、それを踏まえて国内の先進的な実践を行う施設がどのように変更していくかについて確認することを優先し、国内の現地調査を1年遅らせて、平成29年度に行うことにした。また、平成28年度に多種多様な研究資料を収集することにおおむね成功したが、それを整理するところまで研究が十分に進まなかったことで、人件費を使用するに至らなかった。さらに言えば、コンピュータ1台を平成28年度中に新しく購入する予定であったが、研究に使用できる状態にセッティングする時間がなく、無理をしながら既存の物をそのまま使用し続けたため、未使用金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画どおり、国内の先進的な実践を行う施設を訪問し、現地調査を実施する。また、平成28年度にできなかった資料の整理を行うとともに、新しいコンピュータ1台を購入し、研究に使用できる状態にセッティングする。これらの作業を行いながら、合わせて平成29年度分を効率的に使用したいと考えている。
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