2018 Fiscal Year Annual Research Report
Kogai, an endless environmental issue; a comparative environmental education research amaong Minamata, Chernobyl, and Canada
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16K04535
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
安藤 聡彦 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40202791)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 公害教育 / 環境教育 / 水俣病 / チェルノブイリ原発事故 / 福島原発事故 / 比較環境教育研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまでの研究成果をめぐる枠組の検討を行い、日本環境教育学会第29回年次大会(於東京学芸大学)において口頭発表を行った。 2017年度までに水俣市周辺及びベラルーシ共和国において行ってきた調査をふまえ、公害問題にかかわる比較教育研究の枠組として次のような捉え方をする必要性を提起した。 ①公害教育研究の対象を公害問題と人間形成体系の相互作用と規定し、その記述と分析、規範の提示、を行うことを公害教育研究の課題とすること。②その相互作用については、a)インフォーマルな人間形成過程の動揺と再編、b)ノンフォーマルな人間形成の場の構築、c)フォーマルな人間形成過程のなかの相剋、として理解することが可能であること。③公害問題も人間形成体系もそれらが位置付く国民国家、さらには当該問題が生じているローカルな文脈が色濃く反映する。例えば、チェルノブイリ原発事故について、ベラルーシの学校博物館においてしばしば「大祖国戦争」(第二次大戦)と並べて展示されている事実は、同国における「国民アイデンティティの構築という教育課題」(関啓子)と切り離して考えることはできない。あるいは、日本国内であっても、なぜ四日市や西淀川には公害資料館があって(同じように大規模な大気汚染公害訴訟を経験した)川崎にはないのかは、それぞれの地域の運動史にかかわる文脈をつぶさに見ていくことがなければ理解することができない。それゆえ、「終わらない公害」をめぐる比較環境教育研究は、「地域研究」の徹底した蓄積に立ってすすめていくことが不可欠である。 下北半島に見るように、現代社会にあっては、公害問題は大規模開発がスタートした時点から多様な健康・環境・社会にかかわる変動として生起する。その意味で長い歴史的視野に立った研究が不可欠であることもまた明らかとなった。
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Research Products
(4 results)