2016 Fiscal Year Research-status Report
教育行政の政治的中立性・安定性・継続性に関する理論的・実証的研究
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16K04536
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 祐介 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (00423434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻原 克男 北海学園大学, 経済学部, 教授 (70242469)
島田 桂吾 静岡大学, 教育学部, 講師 (20646674)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 政治的中立性 / 安定性・継続性 / 1950年代 / 教育政治 / 教育行政 / 脱政治化 / 教育委員会 / 首長 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、(1)教育の政治的中立性が生起した歴史的経緯・背景と、(2)首長ー教育委員会関係の変容からみる政策の継続性・安定性について分析を行った。 (1)については、国内の政治学を代表する学術雑誌である『年報政治学』に、代表者の村上と分担者の荻原が小玉重夫氏と共同で著した査読論文が研究成果として公表された。同論文では、本論の目的は、1950年代の教育と政治の関係について、通説とは異なる理解を提示した。従来、1950年代の教育は保革のイデオロギー的対立により激しく政治化し、いわゆる「逆コース」の一翼を担ったと捉えられてきた。それに対して同論文では、教育が政治化していた1950年代に、現代に至る「教育の脱政治化」状況への転換の起源が、いわば逆説的に生じていたことを明らかにした。 以上のような本論の知見は以下の点において、教育と政治の関係を捉え直す意義を有する。第1は、脱政治化の起点を1950年代半ばに見いだしたことで、戦後の教育政治史における転換点を明確にした点である。第2は、従来の認識では保守反動化としてイデオロギー的に捉えられる傾向が強かった1950年代の改革の歴史的意義を、脱政治化の過程として位置づけ直したことである。第3に、以上2つの点の帰結として、従来は新自由主義などイデオロギー的な理解がなされる傾向が強い1990年代以降の教育政治の動きを、教育の再政治化の過程として捉える視野を開いた点である。 (2)では、日本教育行政学会の50周年記念誌に分担者の島田が武井敦史氏と共著で査読論文を公表した。同論文では静岡県の教育行政を事例として、首長ー教育委員会関係の変容とそれが政策の継続性や安定性に与えた影響、また教育委員会の政策選択や行動の特徴を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は教育行政の政治的中立性が歴史的にどのように形成・解釈されてきたか、また安定性・継続性がどのように変容してきたかについて明らかにしようとしている。本年度はいずれについても国内を代表する学会誌の査読論文に成果を公表することができた。研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、教育行政の政治的中立性に関する歴史的・思想史的分析と、安定性・継続性に関する実証分析を行う予定である。前者については政治的中立性が論者によってどのように定義・解釈されてきたのかを、後者については制度の違いによって安定性・継続性がどのように異なるのかを明らかにする研究を実施する。
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Causes of Carryover |
研究が継続中であり、基金として3年度にわたって有効に研究費を活用して調査分析を実施する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り、物品費、旅費、人件費などに適切に配分して使用する。
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Research Products
(7 results)