2016 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本における就学費・子育て費をめぐる財政法制度構造に関する総合的研究
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16K04545
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石井 拓児 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (60345874)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教育行財政 / 福祉国家 / 学習権保障 / ポスト・フォーディズム / 子どもの貧困 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、世界各国における教育財政・福祉財政制度の実現形態について網羅的な把握をすめるための基礎的なデータベースセットの開発をすすめた。また現物給付・現金給付の各制度について、その類型的な把握につとめるとともに、日本における諸制度の特質について分析をすすめた。石井拓児「福祉国家における義務教育制度と学校づくり-「多様な教育機会確保法案」の制度論的・政策論的検討-」(『日本教育政策学会年報』23、2016年7月、八月書館、28-43頁)、石井拓児「公教育財政制度の日本的特質と教育行政学研究の今日的課題-教育における福祉国家論と内外事項区分論争を手がかりに-」(『日本教育行政学会創立50周年記念誌』2016年10月、教育開発研究所、23-36頁、査読有)、石井拓児「戦後日本における教育行政学研究と福祉国家論-福祉国家教育財政研究序説-」(『教育論叢』第60号、2017年3月、3-17頁)として発表した。 あわせて二度の海外調査を通じ、米国ペンシルバニア州における公教育の無償性をめぐる歴史資料の収集をすすめた。今後、1920年代における公教育の無償性のための政策検討グループによる報告書を手がかりに、その思想的背景と制度設計の解明をすすめることになる。その一方、ペンシルバニア州では、2000年代以降、次第に公教育における保護者の私費負担が、全米のなかでも突出して高まってきていることに着目し、公教育の無償化原則がいかなる構造と仕組みによって解体させられてきたか、きわめて興味深い事例を提供している。この件に関しても、ペンシルバニア州立ハリスバーグ図書館所蔵の資料を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに作業がすすめられているが、米国の教育財政制度・福祉財政制度は、州によって細かな違いがあるため、いくつかの州をピックアップすることでさらに細かな制度研究を進める必要性が生じてきている。上記、ペンシルバニア州の制度事例は、立法化・政策化過程における制度検討資料が多数存在していることが判明したため、かなり細かな分析が可能な状態となっている。以上により、ここまでの進捗状況は、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
全世界的規模での量的把握をすすめるため、アメリカ社会保障局(ボルチモア)への調査を計画する。データ収集のほか、データ集積担当者へのヒアリングを行い、制度解析のための基本的な観点(とりわけ制度概念)についてディスカッションをすすめ、今後の制度類型のための視座とする。初等中等教育段階に加え、高等教育段階における現金給付(奨学金、青年手当、青年住宅手当)と、現物給付(大学授業料の無償化、Student Housing)の仕組みにまで着目点を拡大させ、教育財政・福祉財政の制度検討をすすめる。
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Research Products
(5 results)