2018 Fiscal Year Research-status Report
認知症疑いの高齢者に対する教育学的観点からの生涯学習の利活用に関する国際比較研究
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16K04551
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
鈴木 尚子 徳島大学, 大学開放実践センター, 准教授 (00452657)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教育学 / 認知症 / 生涯学習 / 高齢者 / 博物館 / 図書館 / 米国 / 成人教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、以下に詳述するように、前年度までの研究成果を整理し発表しつつ、新たに国内外の認知症高齢者を主たる対象とした教育事業の事例として図書館に着目し、現地調査を通じてその特徴を明らかにした。 前年度までの研究成果として、日本比較教育学会第54回大会(平成30年6月)では、認知症及びその疑いのある高齢者を主たる対象とした国内外の博物館による教育事業をもとに、生涯学習の観点からそれぞれのアプローチと課題を比較分析した結果について口頭発表を行った。また、同年8月には、米国で開催された国際会議において、我が国の自治体や博物館主導による教育的観点からの回想法事業の事例をもとに、地域で同種事業を推進する上での可能性と現時点での限界について報告した。 さらに、本年度より認知症高齢者への教育事業の事例として図書館に着目し、先進的な事例の考察を開始した。諸外国の事例として、平成30年8月には、米国イリノイ州にある公共図書館地区の一つが介護施設等で実施する認知症高齢者を対象とした教育プログラムに関する現地調査を実施した。本調査成果の一部は、日本社会教育学会第64回研究大会(平成30年10月)において口頭発表を行った。また、平成30年10月には、国内における図書館の事例の一端を把握するため、川崎市立宮前図書館を訪問し、担当者より同館における「認知症の人にやさしい図書館プロジェクト」の概要を伺った。この他、同月には、自身が所属する欧州の成人教育研究学会において高齢者問題を扱う研究大会に出席し、我が国における認知症にやさしい図書館づくりの全国的な動向について口頭発表を行った。 以上を踏まえ、平成30年度の研究成果を所属機関紀要に論文として公表した。この他、平成30年11月には、所属機関において公開講座(「生涯学習としての回想法」「語り合うキオク」)を実施し、研究成果の一端を国民に紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、主に次の点から研究を進めることを計画していたが、ほぼ予定通り達成されたため。
1.本研究課題に優れた実績のある諸外国の生涯学習関連施設に関する現地調査 平成30年度の計画として、前年度の研究成果について、不足分を補いながら徐々に比較考察を行うとともに、可能であればさらに視野を広げ、本研究課題に関して別の観点から取組のみられる事例の現地調査を遂行することを予定していた。これについては、米国イリノイ州にある公共図書館地区の一つが実施する認知症関連の教育事業に関する現地調査を遂行し、運営責任者及び実施者への聴き取り調査、参与観察調査、資料分析調査等の方法論を用いて、学習支援のあり方、プログラムの内容・方法、職員の育成、認知症高齢者及び介護者の教育事業を通じた変容等を中心にその特徴を明らかにした。 2.国内外の現地調査にもとづく研究成果発表及び最新動向に関する情報のアップデート 平成30年度までに国内外で実施した現地調査にもとづき析出した研究成果について、関連する学会や所属機関の公開講座で発表するとともに、時間が許す限り最新動向に関する情報のアップデートを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、本研究の最終年度であるため、これまでの不足分を補いつつ、年度末にかけて全体を総括していく予定である。具体的には以下のように進める予定である。 令和元年度前半には、平成30年度までに複数国の生涯学習関連施設で実施した現地調査について、全体を取り纏める上で、これまでに得られた研究成果のうち十分でない点については、関係者への照会や追加での資料収集・分析を行う。また、必要に応じ、本研究テーマに関する関係諸国での調査を新たに実施し、バランスよく全体を補完していく。令和元年度後半には、これまでの研究内容全体を俯瞰し、諸事例の比較考察を行いながら、徐々に全体を総括していく。 以上と並行して、当該年度までの研究成果を関連学会等で発表していく。
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Causes of Carryover |
平成30年度は所属機関における部局改組等により、学内における業務が多忙を極めたため、学会発表以外の関連集会等への積極的な参加や、海外渡航を通じた調査研究に十分に時間を割くことが難しく、次年度使用額が生じた。これについては、令和元年度に、平成30年度中に遂行できなかった点を補いながら使用する予定である。
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Research Products
(5 results)