2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K04554
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
山本 珠美 香川大学, 生涯学習教育研究センター, 准教授 (60380200)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 大学開放 / 大学教育開放センター / 生涯学習教育研究センター / 公開講座 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦後日本の大学開放について、1945年に法制化への道のりを歩み始めてから、1990年の中央教育審議会答申「生涯学習の基盤整備について」にて各大学・短大に担当部局の設置が奨励されるようになるまでの発展過程を、(1)戦後教育改革における米国大学からの影響、(2)文部省の政策変遷、(3)大学における担当部局の成立、の3点に焦点を当てて検討するものである。 戦後新制大学において公開講座が法制化されたのは1947年学校教育法によるが、一方、1949年には社会教育法が学校開放を謳い、戦前に成人教育講座の実績を持つ社会教育局が「大学開放講座」を実施しはじめた。本来大学業務の一環として取り組むべき公開講座であるが、大学を所轄する大学学術局は(教職員養成課を除き)殆ど何の促進措置も取ることなく、社会教育局の委嘱という形で実施される状況であった。 例外は教員の現職教育としての公開講座である。「教員養成は、原則として4年制大学で行う」という方針に基づき、戦後、学芸大学や教育学部が誕生した。1949年には教育職員免許法・教育職員免許法施行法が制定され、教育職員は相当の免許状を有するものでなければならないという免許状主義が確立されるとともに、旧令による免許状を有する者等については、現職教育によって新免許状への切り替えが行われることになった。その方法の一つとして、大学学術局教職員養成課は大学公開講座に期待を寄せた。第5・6期IFELでは「大学公開講座」も科目として設けられ、大学関係者に対する米人講師の指導も行われた。 このように戦後直後には大学公開講座への期待が高まった時期もあったが、盛んになったとは言い難い状況のまま四半世紀が過ぎる。大学紛争を経て「開かれた大学」が唱えられるようになった1970年代、東北大学、金沢大学、香川大学に担当部局が成立し、大学開放は第二の局面を迎えることになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦後日本大学開放の発展過程の3つの柱について、それぞれ下記について調査し、一部を論文として公表した。 (1)戦後教育改革における米国大学からの影響:第5期および第6期IFEL「大学公開講座」のアメリカ人講師を務めたのは、東イリノイ州立カレッジのエクステンション・ディレクターBryan Heiseである。同カレッジが四半期毎に発行していたEastern Illinois State College Bulletinなどを中心に、当時のアメリカの大学におけるエクステンション事業について調査した。 (2)文部省の政策変遷:戦前に起源を持つ社会教育局の大学開放講座(社会教育法に基づく文化講座・専門講座・夏期講座)に加え、大学学術局教職員養成課による現職教育としての公開講座の動向について、当時の教職員養成課長玖村敏雄・課長補佐上野芳太郎を中心に資料収集を行った。 (3)大学における担当部局の成立:2016年度に本務校である香川大学にて全国国立大学生涯学習系センター研究協議会(前身は大学教育開放センター研究協議会)が開催されたこと、同会が2018年に40周年を迎えるにあたり歴史的検証の必要性が協議会内で議論されていること、同会第一回開催校は香川大学であり、歴史的検証について主たる役割を果たすことが期待されていること、等の理由から、今年度は(3)を中心的に調査した。大学教育開放センター設立前後の社会背景、および、同会の初期の動向について、香川大学内に残る公文書類を調査するとともに、不足分については東北大学史料館を訪問し、教育学部教授会議事要録を中心に検討した。また、初期のセンター教官の大学開放に関する論文を可能な限り収集し、当時の大学教育開放センターの課題をセンター教官の問題意識に基づき分析した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の計画は以下の通りである。 (1)戦後教育改革における米国大学からの影響:IFEL「大学公開講座」について、その詳細を論文にまとめること。 (2)文部省の政策変遷:社会教育局と大学学術局の大学公開講座についての考えを比較検討し、論文としてまとめること。 (3)大学における担当部局の成立:2016年度は香川大学と東北大学の公文書調査を行ったので、初期3大学のうち残りの金沢大学の公文書について調べること。あわせて、初期のセンター教官のうち、存命が判明している教官に聞き取り調査を行うこと。
|