2016 Fiscal Year Research-status Report
幼児の表現に影響を与える描画指導法の検討-自分なりの表現を楽しむために-
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16K04563
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
島田 由紀子 和洋女子大学, 人文社会科学系, 教授 (80369397)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 幼児 / 児童 / 描画指導法 / 表現 / 造形 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、幼児の描画指導法の実態を探るため、①幼児の描画の分類方法の検討、②造形専門家の指導を受けていない、特別なメソッドによる指導を受けていない、一般的な幼児の描画の分類を開始、③造形専門家の指導やメソッドによる指導がみられる幼児の描画収集の検討、④近年の幼児の描画指導法に関する課題、以上4つの事柄について取り組んだ。 ①幼児の描画の分類や分析方法については、これまで色彩、モチーフからの視点から調査研究が中心に行われてきた。本研究では多角的な視点から分類、分析を試みるため、色彩、モチーフ、構図、複数の研究者による評定、さらに保護者と保育者に対しての描画活動に関する質問紙調査を加えることにした。②一般幼児の描画の分類は概ね完了し、複数の研究者による評定を実施し、得られた結果の一部について国際大会で口頭発表を行った。③造形専門家や特別なメソッドを取り入れた描画指導を行っている幼稚園や保育所、小学校等については、各教育施設のHPや絵画コンクールの作品から情報を得ることができた。④幼児や児童の描画指導についての先行研究から、描画指導法の課題として、保育者や教育者自身が描画活動や描画表現に苦手意識があることから指導法にも自信がないこと、したがって外部の造形講師の導入やメソッドによる描画活動が行われている実態があり、それについては保育現場や教育現場だけではなく保護者の意見も賛否があることが確認されたが、幼児や児童の考えや思いを把握する情報は得られなかった。描画指導の目的をどこに置くかによって、指導方法が大きく異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の研究はおおむね順調に進展している。 単独の研究であっても、研究協力者からの助言や指導、造形教育の研究者の協力、また資料提供等によって調査研究を進めることができた。特に日本色彩研究所の研究員からの助言や具体的な分析方法についての意見交換によって、これまで行われてきた手法とは異なる色彩分析方法を試みることができた。 今年度は、特別な指導法や造形専門の指導者のいない、幼稚園や保育所の幼児の自由画の分析を中心に行うことを目標とし、またそれを実行することができた。収集した自由画について、幼児の造形表現を専門とする研究者間で検討を行い、それを描画分析を実施できたことは大きな進展であった。同時に複数の研究協力者に協力を仰ぎ、分析方法について検討することができた。 また、メソッドによる指導法や造形専門の指導者による描画活動を行っている幼稚園や造形教室、小学校の描画も収集することができた。次年度に向けて、調査協力を依頼する幼稚園や保育所、小学校等の検討や準備も進行中である。 次年度の海外調査についても、これまでの調査協力をお願いしてきた機関に依頼している。 研究の成果についても論文掲載、国際学会での口頭発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度については、以下の4つの項目を中心に進めていく予定である。 ①造形専門家やメソッドによる描画指導を受けている、あるいは教育方針や指導法に特色のある幼稚園や保育所、小学校、造形教室といったアトリエ等で、幼児や児童の描画収集を行う。②国内で収集した描画の分類、分析を進める。特に色彩、構図の分類や分析方法について検討を重ね、分析まで行う予定である。③国外調査として、チェコ共和国の幼稚園、小学校の各教育施設における教育方針、描画指導法についての確認とともに、描画収集や質問紙調査を行う。④国内での特別な指導を受けていない幼児の描画の分類、分析結果について報告する。特に、「色彩」「モチーフ」「構図」「造形研究者による評定(仮)」という4つの観点から、描画の分析が完了することになり、指導者側の教育方針や描画指導法と、描画の特徴を関連付けて分析することにつなげる予定である。 これらについては、引き続き研究協力者からの分析方法の意見交換を活発に行うこと、研究協力者以外からも調査研究の内容に応じて助言をお願いしていきたい。
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Causes of Carryover |
初年度、予定したよりも描画収集等の調査に費やす時間がとれなかったことが大きい。地方に行くための調整努力はしたが授業、実習指導、校務等があり、日程的に難しかった。したがって、収集した描画を整理するための謝金、データ入力、統計等を外部発注するには至らなかった。次年度はデータ等の分析は外部発注する予定であある。 また、描画指導の実態に関する文献、報告書、描画指導法に関する資料の入手が難しかった。メソッドによる描画指導法など特殊な教育について、これまで学術論文では、ほとんど取り上げられてこなかったという現状がある。今後は、学術論文以外のネットによる情報や教員研修等も含めた広い範囲での情報収集や資料収集を行う必要があると思われる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の前半にまず計画の見直し、日程調整を行う。その後の計画は以下のとおりである。①国内外の調査先への調査依頼、調査日程の確定を行う。 ②収集した描画の分析について、調査協力者と検討を重ねる一方、外部委託できる作業については外注する。③描画指導法に関する資料収集については国内だけではなく、国外においても積極的に行う。そのために、研究会や学会、公開授業等への積極的な参加を行うようにする。④調査結果の分析が完了した項目から順次、成果発表を行う。
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