2018 Fiscal Year Research-status Report
幼児の表現に影響を与える描画指導法の検討-自分なりの表現を楽しむために-
Project/Area Number |
16K04563
|
Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
島田 由紀子 國學院大學, 人間開発学部, 教授 (80369397)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 描画指導 / 幼児 / 児童 / 造形表現 / 性差 / チェコ共和国 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、3つの研究実績が挙げられる。一つは、幼児・児童の描画や造形作品の収集、及び幼稚園や小学校における造形活動や図画工作に関する情報収集を、国内とチェコ共和国で行ったこと、二つ目は、これまでの調査で明らかとなった幼児の描画の特徴について、論文や学会で発表しやこと、三つ目は保育者の描画指導に関する調査結果の一部について、保育者を対象とした講演会や研修等で報告を行ったこと、である。 国内での幼児の描画や造形活動に関わる調査については、特徴的な描画指導や造形活動、評価方法を行っていると考えられる、幼稚園や保育所の公開保育や作品展で、撮影による作品の収集と指導に関する情報収集を行うことができた。チェコ共和国では、公私立幼稚園、小学校での描画等の作品の収集、教員・保育者への質問紙調査及びインタビュー調査を実施した。 これまでの幼児の描画調査の結果については、自由画の色彩の特徴について論文にまとめた。そこでは、これまでの先行研究に多く見られる目視やマス目を使った手法ではなく、画像編集ソフトを使って各色を定量化する調査方法を採用した。これまで曖昧にされてきた描画で用いられた各色の使用量について把握することが可能となった。この手法による調査結果では、ピンク、肌色、茶に有意差が認められ、女児特有の使用色であることが確認できた。その他、活動的な女児の描画の特徴には男児の描画の特徴と重なる部分があること等ついての報告や、これらの結果を反映させた保育者養成の授業内容や方法についても提案することができた。 保育者等を対象とした講演会や研修会では、これまでの調査や情報収集の経過を踏まえ、幼児の描画表現とその際の保育者や保護者の言葉がけによる影響について報告し、また描画活動を含めた造形活動の際に使用する画材や教材の工夫について提案を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内の一般的な幼稚園や保育所等での、保育者や保護者の意識調査について分析中である。幼児の自由画については、モチーフ、構図に加え、今年度は色彩について画像編集ソフトを用いて定量的に分析することができた。また、特色のある指導を行っている幼稚園や保育所には、公開保育や造形作品展に足を運び、実際の幼児の様子や制作の過程、指導の実際を見学することができた。 チェコ共和国での同様の調査についてはやや遅れている。調査対象数が幼児の作品、保育者の質問紙ともに充分ではない。その理由としては、大学を異動したことが影響している。当初予定したスケジュールでの国外での調査を行うことができなかった。大学の異動にともない、校務や学年暦が変わり、さらに学内外の仕事が複数重なったことも、研究計画がやや遅れる要因となっている。したがって、保育者の指導が幼児の描画にどのような影響を及ぼしているのか、総合的に分析、考察することについても充分とはいえず、研究計画の見直しが必要となっている。特にチェコ共和国での調査の実施が遅れていることから、結果の公表を予定していた学会での研究発表の計画にもやや遅れが生じることとなった。 一方で、幼稚園や保育所での研修や講演会を行い、調査経過を発表する機会に恵まれた。そこでは2つの点について報告することができた。一つは、保育者や保護者の言葉がけや指導に関する意識について紹介、提案することができた。二つ目は、幼児の描画の見る観点について事例を取り上げ、具体的に報告することができた。その他、チェコ共和国の幼児・児童の描画や造形作品を紹介した。海外の幼稚園等の幼児の作品や指導の在り方については保育者の関心も高く、その後、幼児の造形活動に取り入れた園もみられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
調査については、国内外のコンクールや特色ある就学前施設や小学校等での描画を中心とした作品や指導に関する情報の収集を行う予定である。また、チェコでの調査対象数が不足している描画と保育者への質問紙を継続して実施する。すでに複数の幼稚園、小学校から調査の承諾は得られていることから、学内外の仕事の調整を行い、計画が円滑に遂行できるよう努めたい。国内では、継続的な調査を1年間実施することが決まっている。このことから調査全体を見たとき、縦断的な調査研究と、横断的な調査研究の両方を実施することになる。保育者の指導と幼児の自由画や制作への影響や要因について、地域、学年、性別について把握すること、同時に個人ごと、あるいは学級での一年間の描画表現の変化について把握することが期待できる。 また、これまで報告している日本の保育者の描画指導に関する考えや言葉がけとの調査結果と、継続中のチェコの教員・保育者の同様の調査結果の比較検討を行う予定である。 そして、自身で収集した保育者の質問紙調査以外にも、国内外の幼児・児童の描画指導に関する情報を文献等で収集したものを整理し、今日の描画や造形表現に関する指導法について検討することを予定している。 最終年度ということもあり総合的な考察を行う予定である。幼児の描画や作品の実態(モチーフ、構成、色彩)と、保育者の指導について質問紙等の結果と、両者の関係について検討する。特に一般的と考えられる園環境や保育者の指導と、特色のある園環境や保育者の指導とで、幼児の表現にどのような相違がみられるのか明らかにし、幼児にとってより自由な表現活動や表現につながる指導について考察する。 これらの調査結果については、国内外の学会で発表を行うとともに、幼稚園や保育所、研究会等での研修や講演会でも公開していく予定である。
|
Causes of Carryover |
大学を異動したことから、当初予定したスケジュールでの国外での調査が難しくなったことが影響している。さらに学内外の仕事が複数重なったため、調査数並びに当初予定していた総合的なまとめが不十分となっている。特にチェコ共和国での調査が十分行えていない。したがって当初予定していた国際学会等での成果の発表も遅れが生じている。 次年度のチェコ共和国での調査計画については、2回の渡航により追加で実施する予定でその準備をすでに進めている。国内の特色ある幼稚園等の情報収集、ならびにチェコ共和国の調査ための旅費として使用を予定している。 また、これまでの調査結果と次年度の追加調査について、主に①幼児・児童の自由画やその他の描画、作品の特徴などの実態、②保育者・教員の指導の実態、指導の考えや意識、③保護者の意識、家庭での描画活動の実態、について比較検討するために分析の一部を外注、追加調査のデータ入力についても一部外注する予定である。また、調査結果について順次発表する予定があり、そのための学会等での発表の旅費、学会誌への論文投稿に関わる費用として使用する予定である。
|