2017 Fiscal Year Research-status Report
現代イギリス保守党政権下の学校間連携の実態と地方教育行政の役割
Project/Area Number |
16K04565
|
Research Institution | Tokyo Seitoku University |
Principal Investigator |
青木 研作 東京成徳大学, 子ども学部, 准教授(移行) (20434251)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 教育学 / 教育行政 / イギリス / ティーチング・スクール / 学校間連携 / 自己改善型学校制度 / 学校から学校への支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の2点についての調査研究を実施した。 1.保守党政権下における学校間連携政策の分析 現在の保守党の学校間連携政策について研究するために、2016年に出された教育白書「優秀な教育をあらゆる場所に」の分析を行った。困難を抱える学校を改善する主体として期待されているのは他の優秀な学校であり、こうした学校から学校への支援(school-to-school support)の効果的な実施を目指して、ティーチング・スクール・アライアンスやマルチ・アカデミー・トラストなどの学校間連携が拡大している。前年度末に、ティーチング・スクールのステータスを得ている初等学校2校(いずれもアカデミー)の校長等にインタビューした結果の分析も含めて、学校から学校への支援についての政策ならびに実態を明らかにした。この研究の成果を関東教育学会第65回大会で発表し、それを基に論文としてまとめ、東京成徳大学子ども学部紀要第8号に掲載した。 2.ティーチング・スクールによる学校から学校への支援についての訪問調査 前年度はアカデミーを訪問調査したが、本年度はコミュニティ・スクール6校(幼児学校1校、初等学校4校、中等学校1校)を訪問調査した(平成30年3月実施)。アカデミーは地方当局から独立した学校であるが、コミュニティ・スクールは地方当局と予算や学校理事会等で関係性を有している学校である。アカデミーと比較することにより、学校間連携の実態をさらに深く研究することを目的とした。この調査結果に対する詳細な分析は次年度に行うが、学校から学校への支援の流れや具体的な方法、また地方当局の関与等について、貴重な情報を数多く得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現保守党政権下における学校連携の実態について研究を行うために、本年度は現保守党政権の教育政策の分析、また、学校から学校への支援の実態について明らかにすることを課題とした。 前者については、2016年に発表された教育白書「優秀な教育をあらゆる場所に」を主に参考にしながら分析を行った。現保守党政権は学校主導による制度(school-led system)の実現を目指して、学校の自律性を高める政策をさまざまに打ち出しており、困難を抱えている学校の支援や全体としての学校教育水準の向上といった学校改善についても、(地方当局のような行政機関ではなく)学校、特にティーチング・スクール・アライアンスやマルチ・アカデミー・トラストなどの学校間連携をしているところが主体となって改善に取り組むことが期待されていることを明らかにした。また、前年度末に実施したティーチング・スクールのステータスを得ている初等学校2校(いずれもアカデミー)の校長等へのインタビュー結果の分析も行い、それらをまとめた成果を学会発表ならびに論文として公表することができた。 後者については、ロンドンにあるティーチング・スクールのステータスを得ているコミュニティ・スクール6校(幼児学校1校、初等学校4校、中等学校1校)においてインタビュー調査を行い、学校から学校への支援の流れや具体的な方法を理解することができた。また、地方当局の関与について聞き取りを行ったことにより、学校改善における地方教育行政機関の役割を研究する上で貴重な情報を得ることができた。 したがって、「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、以下の3つの方策に基づき進めていく。 第一に、本年度は現保守党政権の学校間連携政策について、教育省が出している政策文書や教育省の外郭団体である全国教職リーダーシップ機関(National College for Teaching and Leadership)の出している文書を中心に検討したが、今後は庶民院や貴族院での審議、研究者の見解、メディアの反応等も対象にしながら、文献の収集・整理を急ぎ、分析を行う必要がある。 第二に、本年度末に実施したロンドンでのインタビュー調査により、学校から学校への支援の実態や課題、地方当局の関与等についてさまざまな情報を収集することができた。昨年度の調査との比較も行いながら、本年度の調査結果の分析を急ぎ、ティーチング・スクールによる学校から学校への支援の視点から、現保守党政権が求めている学校主導による制度について検討する。 第三に、地方当局への調査である。本年度の調査により、学校改善に関して学校側から見た地方当局の関与について一定の情報を得ることができた。現保守党政権が進める学校主導による制度の構想においては、学校改善に関して地方当局の役割は限定される傾向にあるが、地方当局へのインタビュー調査を実施することにより、その役割や実態について地方当局の見解を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
(理由) 旅費については、計画段階で見積もっていた金額よりも、低く抑えることができたため。また、本年度は無料で公開されている文献等で研究を進めることができたため、物品費で予定していた文献購入費用が発生しなかったため。 (使用計画) イギリスでの調査を行うための旅費等が支出の多くを占める。その他、学会への参加などの国内出張や文献収集や消耗品の購入を行う予定である。また、イギリスでの調査で実施するインタビューを録音し、そのテープ起こしを業者委託する際の支出を予定している。
|
-
-
-
-
[Book] 英国の教育2017
Author(s)
日英教育学会
Total Pages
293
Publisher
東信堂
ISBN
978-4-7989-1409-1